- ギュンター
- ここらで少し休むか。
戦いの場を後にした一行は、手頃な岩場を見つけると身を落ち着けた。
- ギュンター
- あんたらに一つだけ頼みがある。
- 奴とは少しばかり因縁があってな。だから、奴は俺一人だけで仕留めるつもりだ。だが、俺がしくじったときは、あんたらで奴を仕留めてほしいんだ。
- おっと、こう見えても、俺も昔はあんたらと同じ協会所属の冒険者だったんだぜ。
- あの頃は俺もまだ若くてな。冒険者として名を上げるために、仲間と一緒にいろんな依頼を受けたもんだ。
- そうやって、ちったあ名も知られるようになって、腕にも自信がついてきたときだった。商船の護衛を受けたんだが、あの頃の俺達の実力からすれば、何事もなく終わる依頼だった。
- 実際、海賊に出くわすこともなく、天候にも恵まれたおかげで、予定よりも早く目的地に到着できそうなぐらいだった。だが、急に天候が変わって、ひどい嵐に見舞われてな。
- 気付いたときには船は大破し、俺達は海に投げ出されていた。荒れ狂う海の中ではどうすることもできず、意識が薄れ始めたとき、俺は光に包まれた奴の姿を見た。
- それが俺の最後の記憶で、次に意識を取り戻したときは、漁師達の船の中だった。だが、助けられたのは俺一人だけで、他の連中の行方は分からずじまいだった。
- 光に包まれた巨大魚。それが、漁師達の間で伝えられている精霊魚と知り、全てを失った俺に、新たな目的を与えてくれた。
- 俺は冒険者を辞めて漁師となり、奴を仕留めることだけを考えて生きてきた。そして今、ようやくその機会が訪れようとしているわけだ。
- 少し話が長くなっちまったな。そろそろ行くとするか。
さらに海の深みへと潜った一行は、海底に大きく口を開いた洞窟を発見した。
- ギュンター
- あの洞窟から強い精霊力を感じる……奴に間違いない!
ギュンターは手に持った銛を確かめると、洞窟へ向かって泳ぎだした。
そのとき、一行の行く手を遮るかのように、洞窟の前に巨大な影が姿を現した!
- ギュンター
- くそっ、あと少しだっていうのに……やっかいな奴らが来やがったぜ。