冒険者によって未踏領域が切り開かれていく中で、異種族によって築かれたとおぼしき遺跡が発見された。
遺跡の多くには、招かれざる侵入者から遺跡を守るかのように、様々な罠が仕掛けられ、強力な守護者が配置されていたが、冒険者達は危難を排して、遺跡の謎を解明していった。
こうして、冒険者達によって、遺跡の深部から様々な財宝が持ち帰られ、やがて設立される精霊協会の礎ともなった。
現在でも、多くの冒険者達が、遺跡に眠っている財宝を夢見て、遺跡の探索に挑んでいるが、遺跡の多くは探索しつくされ、枯れた遺跡となっている。
そのため、新たな遺跡に関する情報は、時に法外な価格で取り引きされることもあり、それらの情報を手に入れた者によって、遺跡に赴く冒険者が雇われることもあります。
依頼を受けたパーティーが指定された酒場に赴くと、既に酒場を訪れていたアルベルトに迎えられた。
- アルベルト
- あんた達がこの依頼を引き受けてくれて助かったぜ。
- 交易の途中で遺跡の地図を手に入れたんだが、これがなんと未知の遺跡のものだったわけよ。
- もちろん、未知の遺跡なんてシロモノが、そう簡単に見つかるものでないぐらいは、俺にだって分かっているさ。
- だから、俺もいろいろ調べてみたんだが、この遺跡が探索された記録は一つも見つからなかった。つまり、この地図の遺跡が未知のものである可能性が高いってことだ。
- 未知の遺跡となると、手付かずの財宝を期待できるわけだが、それを手に入れるには、手付かずの罠と守護者も何とかする必要があってな。
- そういうわけで、腕が立って信頼できる冒険者が必要だったわけだが、あんた達ならどちらも問題ないだろう。
遠巻きに様子をうかがっていた一人の男が、一行のテーブルへと近付いてきた。
- マルティン
- 何だ、アルベルト。また、胡散臭い遺跡の地図を買ったのか?
- アルベルト
- ふん、今度は今までと違って信頼できる地図だぜ。
- マルティン
- お前、前にもそう言っていたが、結局、地図は贋物だったじゃないか。
- アルベルト
- 俺が財宝を手に入れたとしても、てめえにだけはビタ一文やらねぇよ。
- マルティン
- 分かった、分かった、俺が悪かったよ。
- それじゃあ、今夜は未来の大富豪アルベルト様の奢りだな。みんな、アルベルト様に乾杯だ!
- アルベルト
- なっ! てめえ!
アルベルトの上げた抗議の声も、周囲から上がった歓声に掻き消され、喧騒に満ちた酒場の夜は更けていった。
翌朝、遺跡に向けて旅立った一行は、森の奥地で地図に記された遺跡を発見した。
- アルベルト
- まさしくこの地図の通りだぜ!
- さぁ、ここから先はあんた達だけが頼りだ。頼りにしてるぜ!
遺跡の中に足を踏み入れた一行は、静寂に包まれた通路を奥へと進んだ。
- アルベルト
- 遺跡なんてものは、罠があちこちに仕掛けてあったり、化け物がうようよいるものと思っていたが、拍子抜けするほど何もないんだな。
一行が遺跡の一室の半ばに差し掛かったとき、一行の足元で何かが作動する音がしたかと思うと、天井がゆっくりと下がり始め、壁が出口を閉ざし始めた!
- アルベルト
- 罠か!
一行は出口を目指して駆け出し、壁が出口を閉ざしきる前に、脱出できたかと思えたそのとき、アルベルトが床に足を取られて転倒した!
アルベルトは素早く体勢を立て直したものの、既に出口は壁によって閉ざされていた。アルベルトは迫り来る天井に押し潰されまいと、天井を支え始めた。
- アルベルト
- くっ、そう長くは持ちそうにないぞ。なるべく早く何とかしてくれ!