精霊伝説
トップページ冒険結果一覧 > E-No.417 (第3回:2012/9/29)

E-No.417

本名:キルケゴール
通称:キルケ

【過去の冒険結果】【メッセージ一覧】

一言メッセージ
人の話を聞くのは習慣だった。
物心ついた頃から死者の声は聞こえていて、それはすごく不思議な響きだったからよく覚えている。
水中で聞こえる音のような濁り、それでいてはっきりと意思が伝わる透明な囁き。
それぞれが方向性を持たず、会話というには意味も薄い、各々勝手に自分の嘆きを訴える様。
その内容は幼い僕には意味がわからなかったけどただ耳を塞いでも聞こえるそれは、日常になっていた。
僕の聞いたことがない言葉や知らない知識はそっと耳を澄ますだけで内に積み重なって溜まっていく。
知らないことを知るのは楽しかったと思う。たまに知りすぎて痛い目にあったり、悪いことをしているようで罪悪感にも駆られたけれどそれよりももっと話が聞きたいと思うほうが強かった。
生者である一族の皆と死者との声が重なって、それを賑やかなことだとその時はまだ勘違いしていたけど。

人の話を聞くのは義務だった。
一族のほとんどは血縁関係で構成される集団だったけど、僕と僕の母の立場は他の大人たちにとっては微妙なものであった。
母は一族内でも優秀な術師で重宝されてはいた。一方で父親もわからぬ子を産んだという非難の目で周囲から見られていたし、僕は僕であれはよそ者の血が混じった子だからと何かと忌避されていたと思う。
不意に混じってしまった異分子の扱いにほとんどの人が戸惑っていた。
一年のほとんどを雪に覆われた極寒の地、閉鎖された環境に住まう死霊術師の里。もしそこから親子二人で放り出されたらおそらく僕らは生きていけない。
だからなるべく周囲の大人たちの話は素直に聞いて唯々諾々と従わなければならなかった。
少しでも一族の掟や規範から外れないように、慎重に耳を済ませて、自分からはけして話しかけてはいけない。
話しかけても良いのは母と、じいさまと、優しくしてくれた年上の従姉妹だけ。
母は母で、立場を確保するために一生懸命立ち回って忙しかったから、親子の時間と会話はいつも少しだけだった。
僕も寂しかったし、母もきっと寂しがっていたと思う。でも母は体も心もそこまで強くない人だったから
僕は平気です寂しくありません、そう言って少しでも安心させて力になりたかった。その言葉を聞くと母は決まってごめんなさいと謝りながら僕を抱きしめるのでその時ばかりは僕も一緒に悲しくなった。

人の話を聞くのは責務だった。
母の兄、僕の叔父にあたる人はとくに僕のことをそうとう疎んでいたと思う。
父親代わりの人だったけれど、いつだってあの人が僕に対する態度は厳しいものだった。
術の扱い方が上手く出来ない僕を落ちこぼれだと罵り、剣もろくに振れないのか軟弱者めと叱られて殴られるのが常だ。
後になってあれはもしかしたら母の能力にどうしても勝てず、上の立場にもいけない叔父の鬱憤が
僕に向けられていただけなのかもしれないと思い当たった。周りいわく僕は母親によく似ていたそうだから。
けれど、当時の幼い僕には叔父と周囲に対する恐怖が先にきて少しも動けずに、ただ理不尽さと悲しみで息が詰まりそうだった。お前が私の言うことを聞かないからと、叔父は苛立ちながらよく言っていたと思う。
そんな事はないと言いたかったけど、抵抗すればもっとひどいことをされると思ったから必死になって聞き分ける。自分の痛みに鈍感になってきたのはこの頃からかも知れない。
母のことを思えば、いくらでも耐えられると思っていたから。

人の話を聞くのは悲しかった。
年上の従姉妹が15の歳に嫁ぐことになった。
じいさまは一族の勢力が弱ってきたから血を繋いで他の種族と契約を結ぶのだと言う。
後にあれが政略結婚というものだと知った。従姉妹は一族のために犠牲にされたも同然だったのだ。
僕はその時でさえ、ただ黙って従姉妹の話を聞いていた。
従姉妹は自分が嫁げば一族の今後はきっと安泰だからと、そう言って悲しげに笑った。
とても優しい人だったから自分の気持ちを押し殺していたのは明白だったけど。
もちろん僕もとても悲しかったし、何より数少ない味方が居なくなってしまう恐ろしさがあって
どうか行かないで、置いて行かないで、と言いたかった。
けれどそうすることで従姉妹を困らせるのもわかっていたから何も言えなかった。言わなかった。
従姉妹が去りゆく短い間、僕はずっと彼女の漏らすぽつりぽつりとした言葉を聞き続けていた。そうすることで少しでも彼女の心を慰め支えてあげられたらと思っていたから。

厳かな祝福とともに従姉妹は送り出され、それから少しだけ季節が巡って、彼女のことをたまに思い出しては寂しく痛む気持ちにも慣れた頃、一族は突然滅ぼされた。
なぜ、どうして、と疑問は浮かべど一切知ることも出来ず、それまで暮らしてきた場所は悲鳴と混乱に満ちた戦場に変わった。怒声と武器が撃ちあう音が響く。火の手がそこかしこで上がっていたし嗅ぎ慣れた死臭がいっそう濃くなる。あの時僕は怖かったんだろうか、よく覚えていない。他の大人たちに匿われた部屋でじっと息を潜めていた気がする。
そうしているあいだにも僕の知っている人知らない人が殺し殺されて、
死んだ人の数だけがんがんと悲鳴が耳をうつから泣きながら必死に耳をふさいでいた。それは全く無駄だったけど。

気づいたら、真っ白な雪原の中を傷ついた母が僕の手を引いて必死に歩いていた。
点々と母が流す血の跡が雪の白を汚して、足あとみたいに見える。
どこをどう通って逃げてきたのかわからない。母が離すまいと僕の手を固く握るからその痛みはよく覚えているのに。
後ろを振り返ると遠くの、僕らが今まで暮らしていた場所の空が赤々と燃えていた。
ぼんやりとそれを見つめながら、現実感もなく皆なくなってしまったのだということを悟る。
確かに僕は悲しかったはずなのだけれどそう感じる心をあの場所においてきて、
沢山の死体と業火に埋まって失くしてしまったように悲しみを感じる事がその時はできなかった。
それより頭の片隅でもうあの場所に縛られることが無くなった母と僕の立場にほっとしていたし、
従姉妹の身を呈した犠牲は全く無駄になってしまったのだとわかって、その理不尽さに対する怒りが湧いていたように思う。
後になってそう感じる自分は反吐が出るほど身勝手で嫌いだ。

人の話を聞くのは生存のための手段だった。
母が死んだ後、僕の唯一の味方はこの世でじいさまだけになった。
それからはずっとじいさまと一緒に過ごしていたけれどカラスの身に変じた人が
僕を守れる手段なんてほとんど限られている。
ちっぽけな子ども一人が戦乱の兆しが見える世界で生き残るには周囲の状況を常に把握して
敏感に機微を察して慎重に慎重を重ねて生き残る手段を選択するほかない。
その点で死者の声が聞こえるというのは状況把握にとても役立つことだった。
失われた知恵や知識を与えてもらえる、自分一人じゃ捉え切れない部分まで教えてもらえる。
同時に聞きたくもないもの、知りたくないことも背負うはめになる事が辛かった。
大量の情報を処理するのにも最初は慣れなくて、何度か誤った選択をしてそのたびに後悔した。
いっそこの能力を捨ててしまえば楽になれるのだろうかと考えたことがある。
でもどうやって?どうせ耳をふさごうとも声は聞こえてしまうのだし、
人は一度知ってしまったことからはどんなに逃げたくても逃れられない。
たぶん目をそらしたり忘れてしまうことを一番罪深いと知っているのは自分だから。
ふいに、一族が皆滅んでしまった時のことを思い出した。
あの時他の皆とともにあの業火と悲鳴の中で死んでしまえればよかったのかもしれないという気持ちがよぎる。
――なんで僕、生き延びているんだろう。
そう思った瞬間から、他者の命を利用してまで生きる自分が恐ろしく許せなくなった。
この時から、身を守るときには最低限の死者しか呼び出せなくなってしまった。

いつからだろう、人の話を聞くのが楽しくなったのは。
幸運なことにこの状況を哀れんで手助けをしてくれる大人は多かった。
遠い縁者であった教会の人たちや、旅先で出会った人たち、それから傭兵団の皆。
得体のしれない僕を受け入れて何の得にもならないのに生きるための手段を教えてくれて
そのうえ自分たちの立場を僕の未来の為に勝手に差し出してしまった教会の人たち。
旅先で出会った人たちは世の中には良いことも悪いことも等しく満ちているものだということを教えてくれた。
戦争難民となった人たちが集っていた傭兵団は、行き場を失った僕にはことさら居心地が良くて
皆戦乱の中でもいつか自分たちの手で失ったものを取り戻せると夢を見せてくれた。
少しずつ自分の内で聞いてきたものに重みが生じる感覚。
僕の勝手な勘違いだったのかもしれないけれど
もしかしたら、この人達のために僕は生き延びててもいいのかもしれないという幻想。
今まで培われた聞き手になるという経験は、この人達の話を聞くためにもしかしたらあったのかもしれない。
そう思ったら、話を聞けるのも悪いことじゃないかなと思えるようになった。

だから今も人の話を聞くのは楽しいものだと思う。
セフェルさんはあまり口数の多い人ではないけれど、時折独り言のように自分の推論や考えを漏らす時、
その慧眼さに驚く。間近でその論理の一端に触れられる時、学べるものが多くて僕は嬉しいのだと思う。
助手として仕事を務めているわけだけれど、僕と彼の知識の差は歴然としているのはわかっている。
少しでもその差を埋めなければと今もわりと必死だ。
ロズくんは逆にとてもよく話すから、聞き逃さないようにするのが少し大変。
セフェルさんに「子守までしなくてもいい」とは言われている。メインの仕事は確かに研究の手伝いだけれど、だからと言って放っておくとさすがに可哀想だし構われたがっている印象を受けてつい気になっている。
僕にも幼少の頃というのはあったけど、ほとんどが大人たちに混じって仕事をこなす日々だったから彼ほど子供らしく振舞った記憶が無い。同い年の子ども同士で遊ぶという経験もほとんどなかったとおもう。
それに自分はどうも子どもらしさというのが欠けていたようだからあの年頃の子が何が好きでどんな付き合いをすれば喜ぶのかが見当がつかなくて困ってはいる。
ロズくんが話しだしてその言うことの全てに律儀に返したら後になってからかわれているだけ、ということも多いけれどそれはそれで僕には新鮮で楽しいかなと思える。
だからまぁ、忙しい時間の中でも今の状態は決して悪いものではない、むしろ穏やかですらある。
そうして僕は今日も誰かが話す言葉に耳を傾ける。

お知らせ

登録状況
【クエスト】継続登録、メッセージ登録、戦闘設定登録、プロフィール登録、セリフ登録、精霊術設定登録、サブクエスト登録
精霊術の習得
具現:火の行使 を習得!
スキルの鍛練
鍛練によって 具現 のLvが上昇! [3→4]
アイテムの購入
霊玉原石 Lv1 を購入! [-200GP]
【今回の抽選結果を表示】【次回の販売アイテム一覧を表示】
アイテムの精製
霊玉原石 Lv1 を精製!
土重耐性 Lv1 を獲得!
装備品の強化
同調によって 主力 のLvが上昇! [1→2]
攻撃 が上昇! [10→20]
同調によって 補助 のLvが上昇! [1→2]
防御 が上昇! [5→10]
精度 が上昇! [5→10]
同調によって 防具 のLvが上昇! [1→2]
防御 が上昇! [5→10]
精度 が上昇! [5→10]
メッセージ送信
オボロネ [150]1件 のメッセージを送信!
キルケ [417]1件 のメッセージを送信!
セフェル [418]1件 のメッセージを送信!

メッセージ

キルケ [417]
「ただいま、協会に行って依頼受け取ってきたよ。今度は隊商の護衛だって。」
「ほう、どこの国でも交易事情は似たようなもんじゃな。
荷を狙う盗賊風情がいるというのはまったくけしからんが。」
「まぁ、そういう人たちがいるから僕らも仕事にありつけるんだけどね…
出来れば何事もなくやり過ごせるのが一番だなぁ。お金は貰えて誰も傷つかないし。」
「…そんな事が起こりうるとおもうか?え?」
「無いね、わかってるよ。言ってみただけ。」
「…でもさ、こういう依頼受けるの、ちょっと懐かしいよね。昔は二人きりで
あっちこっち渡り歩くのに隊商の人たちと一緒に行動したりしてさ。
色々学ばせてもらったよね、知らない場所に行けるのは楽しかったし。」
「うむ、まぁ…そのあとが色々まずかったがの。」
「あ…そういえば止む無く能力使ったから、何人かには避けられたっけ…。
…うん、今回はそうじゃないといいんだけど。」

トレード

セフェル [418]
100GP を受け取りました!
キールケ君! ちょっとお使い頼まれてくれる?

クエスト

クエスト名
パーティ名
メンバーキルケ
 [E-No.417]
セフェル
 [E-No.418]

プロフィール

クラス
種族
性別男性年齢19歳身長168cm体重57kg
とある大陸で死霊術師の家系として生まれた青年。
死者の声が聞こえ、その魂を召喚して従えることが出来る。
戦乱が絶えない地域で一族を滅ぼされた後、一時的に教会等に身を寄せるが、亡くなった人々を埋葬しつつ放浪の旅を続けた末とある傭兵団に属して戦乱を駆け抜けることになる。大陸中を巻き込んだ戦争が集結した後、傭兵団は安住の地を得て稼業から一時引退、その際にこれからの自分の生き方を模索する中で失われた歴史や文化を残す事や自分の能力を別の形で活かす事を考えるため学者や研究者の助手として働くことを志す。

温厚、平和主義、努力型。侍祭の資格持ち。でも無神論者。
よくある死霊術師と違い、死者を操る事に負い目を感じているし
他者に軽蔑の目で見られたらそれもやむなしと思って、受け入れている。
背も顔もあまり成長しなかったので若くみえて舐められるのは
もう諦めた。

今回の精霊協会への旅は懇意にしていた教授の勧めと依頼で
別の人物の護衛兼助手として動く個人的な仕事となっている。

アイコン一覧

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サブプロフィール

キルケゴールが連れている赤い目の人語を話すカラス。
正体はキルケゴールの実の曽祖父で、
昔一族の秘術でカラスの姿に変えられた元人間。
不老の存在で齢100歳を超えているとかいないとか。
保護者的存在として常に傍らにいるが、やや心配性で口うるさい。
そろそろひ孫もいい年なのだから子離れしたいなとか思ってはいるけど
おじいちゃんにとってはいつまでもひ孫はひ孫なのでした。

(特にお呼ばれしない限りはおじいちゃんが誰かとお話はしないようです。)

ステータス

HP火MP水MP風MP土MPMP増加量スタミナ素質PGP
1000000010200100
増幅放出治癒結界強化操作具現中和精製
0000005.0300

精霊術

術No系統種別MPコスト対象
拡大
対抗
発動
術名
22具現精霊召喚10101010××屍兵召喚
43具現攻撃精霊召喚40------××魔槍兵召喚
1383具現火の行使40------××

装備品

主力:両手(武器)LvCP攻撃防御精度
手に馴染んだシャベル
一見何の変哲も無いシャベル、聖銀と魔法が少し溶かし込まれているので丈夫で長持ち。
212000
スロット1
スロット2
スロット3
補助:補具(防具)LvCP攻撃防御精度
英霊使いのピアス
集中力向上等術の行使をサポートし悪意や雑念から身を守る魔道具、特注品。
2101010
スロット1
スロット2
スロット3
防具:中装(防具)LvCP攻撃防御精度
追悼者のローブ
紫色の衣服、奥の手や呪符などを仕込めるようで、少し丈に余裕がある。
2101010
スロット1
スロット2
スロット3
攻撃力命中力受け
防御力
受け
成功力
防御力回避力
主力1391055052112112
補助0000

所持アイテム (1/25)

No種別装備アイテム名価値
1霊玉土重耐性 Lv1(防具)100
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