精霊伝説
トップページ冒険結果一覧 > E-No.397 (第3回:2012/9/29)

E-No.397

本名:ヤスナ
通称:ヤスナ

【過去の冒険結果】【メッセージ一覧】

一言メッセージ
「貧乏人のヤスナー」
「やあい、ボロのヤスナ!」
「やあい、やあい!」

「………」

町に藁束を売りに来た帰りは、決まってこうして周囲を囲まれて、あれやこれやと浴びせかけられる。
齢七つのヤスナは生来身体が弱く、同じ歳の子たちに比べて背も小さく、いつも襤褸を纏って暗い顔。町の子供たちにとっては、格好のいじめ対象になっていた。
長屋から大通りに向かい、わざわざ問屋の脇で群れて、待ち構えているのだ。ヤスナにとっては、なんと暇な奴らであろうかという思いが強く、それは罵声を浴びせられる事よりも、次第に己の境遇への恨み辛みに繋がっていく。
武家や商家に生まれていれば、同じ子供であってもこういう事にはなるまいに。
当然、ひとたび生まれてしまったものはどうしようもなく、母の腹を憎んでも詮無き事だというのは理解していた。なればこそ、この身の弱さを恨むものであった。


「どいて」

「なんだよ、生意気だぞヤスナ!」

「どいてったら」

無理矢理に押し退けて家路を急ごうとすると、肩を掴まれて前に数人が立ち塞がる。
これもまた、いつも通りだ。また痣の出来た言い訳を考えねばならぬ。
ヤスナがぼんやりと無表情に下を向いていると、後方で別のざわめきが立ち上がるのが耳に届いてきた。
今日は随分早いと、まだ日の落ちる気配すらない空を仰いで、ヤスナは思う。

「げっ」
「アシヤ、まずいよ」
「なんだ、おどおどするなよお前ら!」

「こらぁー!」

皆のざわめきの理由は、突如飛び込んできた、鈴の鳴るような声色にそぐわぬ裂帛の気合によるものだった。
雄雄しく掲げられた竹のほうきはさながら薙刀か長槍か。ぶぅん、と振り回された切っ先が、一団の中でもっとも良いべべに身を包んだ少年を直撃した。

「いてっ!」

「ヤっちゃんいじめない!」

「うわっ、イツカだ!逃げろ逃げろ!」
「おっ、おい……お前らまてよ!」

前掛けをつけた、長い黒髪の少女。顔立ちは美しいが、いじめっこ連中を容赦なくとっちめるその般若のような腕っぷしから、彼女は町の子供の中では畏怖の対象であった。
大通り沿いにある信太そば、その一人娘であるイツカである。
イツカの大立ち回りに怯んだ少年たちがあっという間に散らばると、一人取り残された、侍をそのまま縮めたような少年が、苦虫を噛んだような目でヤスナを睨む。

「くそっ、覚えてろよヤスナ!」

ヤスナにしてみれば何を覚えておけば良いのか、という気分だが、ともあれ受難は去った。

あの少年はアシヤ。
武家の子であり、善政で有名な左京・美濃守公より続く譜代岡部家、そこに奉公する岸和田武士の中でも音に聞こえし名家の長男である。
この天下泰平の世において、彼らはその忠孝を発揮する場を次第に失い、気がつけば名家は名家であるというその立場だけが残っていった。
生まれながらにしての忠臣、連綿と受け継がれていく、未来を約束された垂涎の家督。
その素晴らしいまでに恵まれた血は、アシヤを労せずして餓鬼大将の座へと押し運び、結果として彼に逆らう子供はイツカ以外誰も居ない、そんな状況を作っていた。
号令一下、子供たちは彼に従ってやんちゃを尽くす。
中でも、打たれるがままの青竹のようなヤスナに対し、その当たりようといえば目に余るものがあった。

アシヤがヤスナを面白半分に虐め、それをイツカが義侠心から守り、自分とは無関係に進む周囲のいざこざに当のヤスナ自身がうんざりとして、冷めていく。

そんな一連の流れが、今日また繰り返されただけである。どこかへ走り去っていったアシヤの背を眺めながら、ヤスナの表情は淡々としたものだった。









「ヤっちゃん、大丈夫?痛いことされてない?平気?」

井戸の水を汲み上げ、顔を洗う。それを、待ち構えていたかのように、少女は手ぬぐいで彼の顔を拭いた。

騒ぎが落ち着いて、二人は蕎麦屋の裏手に居た。店内で炊くかつお出汁の良い匂いが、ふんわりと立ち込めて来るこの場所は、実はヤスナにとっては余り嬉しい場所ではない。

「お腹すいたでしょ!私、おとうに言っておむすび持ってきてあげ――」
「いらない」
「え、…どうして?」

イツカは常にこんな調子で甲斐甲斐しく世話を焼いて来るのだが、それが彼にはたまらない。
押し当てた手ぬぐいをぺしゃりと叩き落としたヤスナを見て、イツカの目はまんまるく見開かれた。

この優しい少女が、打算や興味本位で助けてくれている訳じゃないのは、ヤスナ自身が良く解っている事だが、それでも抑えきれぬ感情がふつふつとこみあげる。

「イツカの家は裕福だから、ぼくを助けてくれるの?」
「えっ」

こんな事言いたい訳じゃない、でも。

「…まるでのらいぬみたいだ。おうちで飼えないけどちょっと可哀想だって、そんなものみたいだ」

だけど我慢出来ないのだ。
悔しくて、悔しくて、どうしようもなくて、苦しいのだ。
胸が張り裂けるという表現を良く聞くが、張り裂けられたらどれ程楽なことだろう。

嫌になるほど冷たく硬く閉ざされて、きっと斧を振り下ろせば刃が欠けてしまう程。

ヤスナの只事ではない苦悶の表情と震える呟きを受け、イツカはわなわなと揺れる唇を手のひらで隠す。
お前のしている事なんて全部辛いだけだ。そう突きつけられたようで、悲しい。
でも驚きに任せて泣いてしまったら、きっと余計に彼を苦しませるだろうと、幼いながらに少女は気付いていた。

手を取ろうと、寄せていく。

イツカは伝えたい。『君が好きだから』だというのを、体温に乗せて。
悲しい顔じゃあ伝わらないだろうと、目一杯に無理矢理な笑顔を浮かべて。

「ち、違うよヤっちゃん!そんなつもりじゃ…」

だが、その手や心遣いは酷くも振り払われた。
いや、然し誰がヤスナを責められるだろう。ここに居る少年少女は、まだ生を受けてから七つの歳を過ごしただけの、未成熟な子供たちなのだ。打算の涙などとは縁遠い、嫌になるほど純粋な心が二つあるだけだ。

呆然とするイツカから目を背け、ヤスナは荷を降ろして軽くなった籠を背負い直す。

「もういいよ。帰る」

立ち上がり、足早に立ち去るその背中は、彼の顔を映しては居なかったけれど。
震える肩は、いつものように誰にも見えないように涙を隠している事を解りやすく示していた。


「ヤっちゃん…!」


イツカの声は、やがてその背には届かないほど遠くなっていく。
およそ、九つほど聞こえた自分の名は、最後には掠れて風の音と変わらぬ何かのようになっていた。











――――



優しさが、惨めさを余計に掻き立てる事だってある。




「……っ、うぅ……」




誰かの強さが、自分の弱さを思い知らせる事だってある。




「……こんなのじゃ、っ……嫌だ……」



イツカは優しい。
アシヤは強い。

自分は、優しくも、強くもない。
それにこんなに泣き虫で、ただじっと耐えるだけの、物言わぬ貝みたいだ。

帰り道を行くヤスナの足は重い。その重みは、なんだかいつもより一層きつく圧し掛かるものに思えていた。















それから数日後の夜だ。ヤスナは体調を崩し、日がな一日床に臥せっていた。
身体が重く、熱にあえぎ、動悸は著しく、視点は定まらない。
医者に掛かる金など当然なく、栄養が足りていない為免疫力も弱い。
布団の傍には天に祈るばかりの両親の姿があるばかりで、今際の際は膝まで浸かる程に足元から湧き上がって、今にもヤスナの命を彼岸へと押し流してしまいそうだった。





その折である。ヤスナが、例の夢を見たのは。





広がる川と久遠の闇の向こうに一人佇む少女。
美しくて、温かくて、とっても寂しそうで。

自分みたいで。でも、自分なんかよりもっと、苦しい何かを背負っていて。
誰も周りに居なくて。きっと寒くて、静かで。それでも笑ってくれて。


初めて芽生えた、誰かの為に、走るがままの感情で、優しくなりたいという気持ち。






ヤスナは誓う。
今の自分では、きっと君の手を掴めないのだ。
君を守って、強い心で、任せて安らげるようにはしてあげられないのだ。


だから、イツカのように、
アシヤのように。




必ず全てを手に入れて、君のそばへ戻る。
それは、ヤスナにとって、初めてで、唯一の、恋の誓いとなった。







+ ―――― + ―――― + ―――― + ―――― + ―――― + ―――― + ―――― +








「まあ、身体中すっかり泥だらけ。…ヤスナ様、それは?」
「……ああ、稲の苗だ。あっちは大根と人参、大豆もあるな。
 それと、向こうはゲンゲを植えた。ぬかるむから土を踏むなよ」
「ここのところ毎日汗を流されて…お食事の為に大変な手間が掛かるのですね」
「あの、私に何かお手伝い出来ることは御座いますか?」
「必要ない、気にするな。お前のような細っこい女がする事じゃない。
……第一、俺の糧の為だ」
「……そうですか。 では、お邪魔になってもいけませんので私は――」

「まて」
「あっ、はい?」
「…あと二刻もすれば護衛の隊商と合流する刻限だろう。
 そろそろ切り上げて、俺は湯浴みをしてくる」
「あら、もうそんな時間でしたか。では私も準備をして来ないと」
「刀と、干しておいたいつもの俺の服を用意しておいてくれないか。
 それと、そこの頭陀袋を荷物に添えておいてくれ」
「袋…これですか?何ですの?」
「芋の根とか、切れ端とか、厚めに切った皮だ。
 蜜で少し煮て、冷ましてから干しておいた」
「お召し上がりに?」
「お前の飼っている狸がな。
 ……そいつもたまには滋養のつくものを食いたいだろう」
「兎も角、半刻ほどで戻る。よろしく頼む」

「……」
「人というものは、生きるだけで色々と大変です…
 ―――だからこそ、心が必要なのかしら」

お知らせ

登録状況
【クエスト】継続登録、メッセージ登録、戦闘設定登録、プロフィール登録、セリフ登録、精霊術設定登録、サブクエスト登録
精霊術の習得
増幅:治癒 を習得!
スキルの鍛練
鍛練によって 増幅 のLvが上昇! [3→4]
アイテムの購入
霊玉原石 Lv1 を購入! [-200GP]
【今回の抽選結果を表示】【次回の販売アイテム一覧を表示】
アイテムの精製
霊玉原石 Lv1 を精製!
火の支配者 Lv1 を獲得!
装備品の強化
同調によって 主力 のLvが上昇! [1→2]
攻撃 が上昇! [7→14]
精度 が上昇! [3→6]
同調によって 補助 のLvが上昇! [1→2]
防御 が上昇! [2→4]
精度 が上昇! [8→16]
同調によって 防具 のLvが上昇! [1→2]
防御 が上昇! [3→6]
精度 が上昇! [7→14]
メッセージ送信
いろり [251]1件 のメッセージを送信!
フィオ [253]1件 のメッセージを送信!

メッセージ

アルテ [162]
「ヤスナ様、剣術のほど、お見事で御座いました。」

「はい。
 どうぞヤスナ様に不自由の無き様、お望みの通りになさってくださいませ。
 書物以外のものでしたら、お好きな様に扱って頂いて構いません。」

「あの家はヤスナ様が思われているより、ずっと『大所帯』ですの。
 新しい住人に、皆はしゃいでおります。
 どうぞ、ヤスナ様のお住まいだと思って御寛ぎくださいね」

「田畑には妖精の加護を賜りましょう。
 きっと豊作が約束されますわ。」

「私、『人の心』を研究しております。
 ヤスナ様をお迎えさせて頂けたのも、きっと何かのご縁だと思いますわ。
 アルテめに出来る事がありましたらどうぞご用命くださいませね。」

「………ところで、『囲う』とはどういう意味なのでしょう?」
アルマ [249]
ローブを着た子供が着物や刀を珍しそうにじろじろと見ている
「……」
ナッツ [376]
「あら、あなたは…」


ここらでは見かけないその服装と武器に興味を持って近づいてきます。

「変わった服ですわね、確か東洋の…着物、というでしたっけ、興味がありますわ」
「こんにちは、私はアドナー・ナッツァ・ダンピール二世と申しますわ」
「あなたも冒険者かしら、よろしくお願いしますわよ」

トレード

アルテ [162]
100GP を受け取りました!

クエスト

クエスト名
パーティ名
メンバーアルテ
 [E-No.162]
ヤスナ
 [E-No.397]

プロフィール

クラス
種族
性別男性年齢20歳身長181cm体重???kg
人の情けに寄り竹の
賤が苧環 繰り返し
縒れつ縺れつ 君が思ひのかねごとは
宿る暇なく くるくると
きりきりはたり ちやうちやうと
織る機布こそ やさしけれ


――――――――――――

藍染の小袖に草鞋、髷も結わぬぼさりとした薄暗い髪。
悪し様に言えば、人相と気色を悪く見せている三白の双眸。
その身形身分にそぐわぬ、引き抜けば青白く照り返す美しい太刀を一つ、腰に帯びる。
脇差はなく、紋の付いた袴も無く。ともすれば浪人か狂人か。
その男、ヤスナは、どちらとも示し難い。

ヤスナの生家は決して裕福とは言えぬが、
日々の糧に困る程の貧乏は無い。
右を向けば右に、左を向けば左に。そんなどこにでもある農家だ。
その家の戸口には、誰かしらに貼り付けられた一枚の符がある。


『誘ゐ神立入禁ず』


――――。

ヤスナは、忌み子であった。

人に憑き、人を誑かす魔性の祟り神。
村の人々、近隣の町衆が皆一様にそう語り継ぎ、避けてきたものを。

あろうことか。ヤスナは、愛しているのだ。




或る日、ヤスナは神隠しにあった。
「それ見たことか」 皆、口を揃えて、そう言った。

その通りなら、ヤスナにとってどれ程焦がれた瞬間だったろうか。


彼は今、愛した神の傍では無く、驚きと幻想が支配する、この地に立っている。

誓いの太刀が持つ、変わらぬいつもの重みが、これは夢で無いとヤスナに告げているようだった。

アイコン一覧

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ステータス

HP火MP水MP風MP土MPMP増加量スタミナ素質PGP
1000000010200100
増幅放出治癒結界強化操作具現中和精製
5.0300000000

精霊術

術No系統種別MPコスト対象
拡大
対抗
発動
術名
1増幅強打40------××上段壱の型  - 雷刀 -
2増幅連撃----40--××中下段壱の型  - 文銭流し -
36増幅治癒--40----×

装備品

主力:両手(武器)LvCP攻撃防御精度
銘・和泉國岡部蛍胤 石蒜此岸
二尺八寸と異例の長さを誇る大刀。茎(なかご)が赤で塗られ、白字で銘が刻まれている
211406
スロット1
スロット2
スロット3
補助:補具(防具)LvCP攻撃防御精度
漆塗内鋼太刀拵楠鞘
鞘内に鋼板が仕込まれ強度を増した、楠の鞘。はばきの抜けと鞘走りの音色は涼やか
210416
スロット1
スロット2
スロット3
防具:軽装(防具)LvCP攻撃防御精度
藍染麻小袖
非常に簡素で飾り気の無い、藍染めの小袖。とはいえ、ヤスナの一張羅である
210614
スロット1
スロット2
スロット3
攻撃力命中力受け
防御力
受け
成功力
防御力回避力
主力137108505498125
補助0000

所持アイテム (3/25)

No種別装備アイテム名価値
1霊玉火の支配者 Lv1100
2素材精霊兵の破片75
3素材ゴブリン銅貨25
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