精霊伝説
トップページ冒険結果一覧 > E-No.96 (第28回:2013/3/30)

E-No.96

本名:キワコ
通称:キワコ

【戦闘結果】【過去の冒険結果】【メッセージ一覧】【Twitter】【Link】

一言メッセージ
「…ここまでか…。くっ…!」


「なんとか、討ち取った…か…ッ…!」


(しかし次の打者は…)

「まごうことなき4番ッ!!」

「頼むトリ!打ってくれ!お前の一打にメルヴァルツァの協子園出場がかかっている!!」
←(応援席)
「協子園なんて当たり前だ…!俺の目に映るのははなからプロ!セ・リーグのみ!※精霊リーグ
 さあご心配要りませんよフォルカー様2アウトからが…野球です!後は俺にお任せ下さい」

「審判!先ほどの接触でサルバトールは負傷した!走行は困難です!」
「エッ ああいたたたたたァ!!(演者の本領発揮だァ!)」
「従って交代ッ!代走は俺の親友…」



《瞬馬リンゴスター!!》


「な………
 ………………馬 だ  と」


(もう―――もう限界だ――刺せるイメージが湧かない―)

「ペーター様!!」
「ハッ!」
「何を弱気になっているのです!忘れたのですか!何の為に…何の為に生活を切り詰めて
 借金をしてまで狙い撃ちを Lv8 [+2]にまで仕上げたか!!
 ストライクを入れる為でしょう!!」
「サエトラ…!」
「サード マカセロ  ウマ クル トメル オレ トモリ」
「トモリ…!」
「ペーター様…キワコの…お真ん中へ……
 《オッフェンレンツの火の精霊力》燃える魔球をおいれくださいまし……!」
「…!し、しかし……」
「キワコは…女房……いいえ、女房"のようなもの"… ……ペーター様、
 お約束致します…この試合が終わったら…金輪際コルネリア様のキャッチャーミットを持ち出さぬこと…」
「キワコ……」

「そうだ…。
 私はオッフェンレンツの投手!…皆の者!背後は任せた!ここが正念場だ!」
「それでこそ…オッフェンレンツ家の投手!!」
「ペタサマ エライ オレ トモリ」
「あなたのその自慢のたま!プライドごと俺がバットで討ち取って差し上げます!」


(私は投げる――先代投手マテウスの名に恥じぬ球を!)

※※※ 1更新につき3話詰め込んであります この結果はスクロールしてもスクロールしても終わりません ※※※
    26話までのおはなしは http://dolch.bitter.jp/sub/seirei/story/kiwako.html

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
                  第27話『Tiere』
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
―――ハイデルベルク。中央都市、華やかな娯楽の場 
富裕層に限られた観客でも、席は埋っていた。競技場の中央に備えられた台で、
先程まさにレースを終えた騎手達が手を振っている。
司会がその一人に話かける。男は答える。声は朗々として、歓声の中でもはっきりとしていた。


『勝負にはいつも勝つつもりで挑んでいます。皆そうでしょう。』







『オッフェンレンツ領』
「開かれた春」の名を持つ豊かな土地。ハイデルベルクから馬で二日ほどの距離に広がる田園地帯。
古来魔物達の襲撃から農民を守ってきた家が次第に勢力を増し、農民等を守る代わりに年貢を受け
取るようになり 
やがて土地の領有権を持った上で農民に貸し出して税を取る、という形の地方豪族となった。

血脈に遺伝する、オッフェンレンツ一族の精霊力は春の力。この土地の守護を司る守人の血。

----------------------------------------------------------------------------------------------------

ズン、ズン、ズン、ズン、ズン、ズン、ズン、ズン、
地響きを立て、オッフェンレンツを侵攻する
規律立った 怖ろしい金属の数百の槌、地面をまっ平らにしてしまうまで
止まらないのではないかと言う程容赦なく、手酷く地面を踏み鳴らす。
地は揺れ、風は止み、人々の心を真っ黒に飲み込むように
遠く、近く、進軍する鉛兵の尖った兜は、ギザギザの小さな、歯のように見えていた。

 ああ喰いにきた、巨人な大口、
 悪魔がきた、オッフェンレンツの土地を喰らいにきた

オッフェンレンツの民は、日々の仕事を土や水に向かう。
それだから――土地を想う気持ちは余所者にはわからぬ強さがある、
郷土は苦楽を共にするひとつの家族であるのだ。一日足りと蔑ろにすることなく、
重ね重ね手間を差し出しその脅威を預かるからこそ、土地は恵みを人に向ける。

<<開かれた春に生きる者らは、みな同じ穂に実り、同じ牧場の草を食む、兄弟のようなものだ。
 それが血を流し、母である土地が踏み躙られて、どうして平静でいられるだろう、
 少なくともここへ集った男たちはそうだ>>


その士気、一つになった心は、ほとんど虐殺に近い冷酷さを見せる鉛兵へ、立ち向かう勇気を持たせる。
「おれらの土地だ」「おれらが守るんだ」
切な言葉、強い想い、波の様に立ち上がる。オッフェンレンツの民達。
男は、それを馬鹿にしたように一瞥する。
戦において個々の人生は配慮されない、全体は概ねその様な士気で立ち上がっているらしい。
それはまるで見当違いのことに思える。呆れてしまうのだ。


(想いで勝てれば誰もが努力を惜しむだろう。)

壮年の男。胸に生えた矢に、涙交じりの、狼狽の声を上げる。
傍らの男がそれを解らぬなりに看病する、矢を抜いてよいものか、さすると内臓を傷つけてしまうのか
身体をささえ、手を握る。「ああしんじゃあ駄目だ!気を強く持て、」
手の中でペンを一周回すように軽く、
鎌が二人の首を一息に跳ね飛ばした。
ぱしゃぱしゃと、ペンキをふりかけるように、柔草に地がまぶされていく。

丘の上から降り注ぐ矢、曇天を駆け墜ちる。
呼応するオッフェンレンツのうめき、悲鳴 メルヴァルツァ本陣ではそれも他人事の様に膜がかって耳に届く。


夕日のような血の色が、レンツの野原に燃えている。

―――――『  …    … … … 』

オッフェンレンツは劣勢に立たされていた。
メルヴァルツァ、鋼の土地。資材無く、傭兵家業や騎士の輩出、武器の扱いで何とか食いつなぐ土地。
戦を欲し、戦によって己等の業に価値を宿す軍勢。
オッフェンレンツが水や土に向かってきた日々、長い月日を戦がどういうものかという覚悟に費やした兵達。
怖ろしいと思う間も無い。元より数も、装備も、立地も優れているのはメルヴァルツァ。
必然の劣勢であった。
メルヴァルツァにとって後はどれだけ被害を出さず、鎮圧させられるかと言うもの。

――『  …ォ…    …  』

今にも、絶え間なく叫び倒れ、レンツの民の首が狩られる。
覚悟の足りないもが踵を返したとしても、既にレンツの横列を破り
内地へ侵入した鉛兵は、それを追い、刈る。


・・・
雪崩れ込む鉛兵によって横列を突き崩され、散り散りにはぐれた人々。
その一陣、6人ほど 鉛の波の中に取り残された男達が、
鋤を持ち、鍬を持ち、洞窟の開拓等に使うような火薬を持ち…



「う、」
 
「うぐ、」

「しかたない…降参する、ほか」

「ふざけんな、皆で戦ってるんだ、おれらだけ、そんなことができるか!

「けれども…、死んでしまっては、なににもならない」


男達は顔を見合わせ、頷く。そうだ、死んでしまっては何にもならない。
生きてこそ、反撃のチャンスも何もあるのだ。男の一人、最も年配の中年男が
頭に手をやり、しゅるりと手ぬぐいを解く。白旗代わりにそれを振る。
鉛兵が旗ごと男を貫く。男達を、次々に串刺し、地面に叩きつけて行く。
そして決まり事のように首は切り落とされる。ゴトリゴトリと音を立て、地面に転がっていく。



「あっ!
 …フォルカー様今の白旗だったかもしれません、失敗しちゃったかな…」
「………」
「でもまあ…暗くてよく見えなかったし、俺はこの広い戦場を見渡していかなきゃいけないんですから 一画にそう集中を割いているわけにもいきませんし。次から気をつけますね!」


フォルカーが金の小手を掲げる。きらり、閃く。メルヴァルツァが弓を引く。
フォルカーの号令に従い、丘の上から弓が一斉にオッフェンレンツ内地に降り注ぐ。
再び小手が煌く。今度は水平、森に待機するメルヴァルツァ兵に弓を構えさした。
矢の的は鉛兵の凄まじい防波を掻い潜り現れた、オッフェンレンツの若者の小隊であった。
鉛兵は背後を取られようとも、慌て後ろを振り返る事は無い。
前面のレンツ民達に注目し続け、後方は――控えるメルヴァルツァ兵に任せるのみであった。

―――『  … …  オ …ォ  』

放て、その号令、あと一呼吸の所 指に力込め、弓引き、その瞬間だった。
視界がぶれる。目にとらえていたレンツの若者達が霞み消える。
目には草、地に伏している
前方にあるはずの領主フォルカーの金の小手が後方に見える。
メルヴァルツァ弓兵は、自分が後方から吹き飛ばされた事にようやく気づいた。
鐘突きのような衝撃。筆舌し難い圧迫感、もうその一撃で肺が潰れたと言うような感覚、
息無き激痛、続いて振り下ろされる槌―――

呻く声。人間の苦しみのたうつ声に、フォルカーは目を見開く。
何が起こったのか解らなかった。だが眼前で転げて血を吐いているのは紛れも無く己の兵だった。
何事か――と、後方、暗夜の木陰、暗い視界に目を凝らす。



…暗闇を目が光る。森の中に…何かいる!

――――――『  ォォ ォ  オ …ォ ! 』

その時だった、脳に鳥肌が立つようだった。
その瞳は一片にわっと増えた。千にも万にも木漏れ日のように、森の中にてんてんと光が射した。



・・・

激しく人が行き交っている。遠い地鳴り、進軍のそれに近く、けれどももっと無秩序な音の放流。
恐る恐る塹壕から顔を出したサルバトールは、息を呑む。

―――オオオォオオオオオ オオオ 地平――野原――あたり一面――


「う、そ だろ」
              オオオォオ オオ オオ オオオオォオオオオ

それは圧倒的な光景だった。

オッフェンレンツの野原を獣の大群が覆っている!
トナカイ 鹿 熊 穴熊 野兎 狼 鳥 蝙蝠 栗鼠 野鼠 もぐら 猪 山羊 馬 狐 
様々な動物が列をなし 互いに争うことなく戦場の地平を埋め尽くしている

様々な人ならざるものに言葉を与えた、自然讃歌…
舞台演者であるサルバトールは、ハイデルベルクでそういった劇をしていた。
確かに、動物の衣装に身を包み、若い雄鹿の役を踊り、
動物として愛を語り合い、動物として森の仲間の幸福を祈った、
だけれど!


「――動物に心があるなんて、戯曲の中の話だ!」

ドオオォオ ドドドドオオ オオ オオォオオオオ オ ォ オ オ
---------------(続いて自分宛メッセージ欄へ)---------------------

お知らせ

登録状況
【クエスト】継続登録、メッセージ登録、戦闘設定登録、プロフィール登録、セリフ登録、霊玉設定登録、サブクエスト登録
【イベント】ペアマッチ
パスワード変更
精霊術の習得
増幅:乱撃II を習得!
増幅:治癒IV を習得!
素質の開花
風MPアップ Lv5 を開花! [-1P]
→ 風MPが上昇! [80→100]
スキルの鍛練
鍛練によって 増幅 のLvが上昇! [44→45]
アイテムの合成
火の支配者 Lv5 [+1]火の支配者 Lv1 を合成!
→ [+1] … 失敗 [83%]
火の支配者 Lv6 を獲得!
サブクエスト:精霊兵研究所(ヘルミーネ)
精霊兵の破片 をポイントに交換! [+75P]
精霊兵の破片 をポイントに交換! [+75P]
精霊兵の破片 をポイントに交換! [+75P]
精霊兵の破片 をポイントに交換! [+75P]
装備品の強化
同調によって 主力 のLvが上昇! [26→27]
攻撃 が上昇! [212→222]
同調によって 補助 のLvが上昇! [26→27]
攻撃 が上昇! [260→270]
同調によって 防具 のLvが上昇! [26→27]
防御 が上昇! [130→135]
精度 が上昇! [130→135]
メッセージ送信
キワコ [96]38件 のメッセージを送信!
ペーター [172]1件 のメッセージを送信!
アジコ [235]1件 のメッセージを送信!
ロジーヌ [281]2件 のメッセージを送信!

メッセージ

キワコ [96]
緊急事態となれば、動物達は戦火を恐れ逃げ出すのが普通ではないか。
何故揃い、何故肉食獣と草食獣や鳥達が争わない?いや…
などと、あっけにとられるサルバトールを脅かすような獰猛なひと吠え、
天高く響く遠吠え。立ち並ぶ動物達の中狼が矢のようにまず一陣、飛び出した。


(戦って、いる、戦っている、メルヴァルツァを――こちらに、向かってきている!)

「うそだろ…動物が――守っているのか?オッフェンレンツを…」











オッフェンレンツの血
ヘラ・イラ・フォン・オッフェンレンツ
先々代ヨハン・ベタッド・フォン・オッフェンレンツの娘
キワコ
先代マテウスの種
妖精の里帰り
動物の巡礼
産まれてくる、オッフェンレンツの獣達には、
『オッフェンレンツの血』が流れている
血脈に遺伝する精霊力は春の力
この土地の守護を司る守人の血。








声とも地響きともつかない。受け止めきれない程に力強い振動
束ねられた力、動物達は猛然とメルヴァルツァ軍に突進し始めた。
獣達は駆けていく。美しく筋肉をしならせる、光が無くても毛並みは流れ、
蹴り上げる土は紛れも無くオッフェンレンツの土であり、
本来ならば未だ凍えているはずの者達も冬眠からも覚め、
きらきらと光る眼光は、星空が川を流れて行くようだった。




・・・


「フォルカー様!うしろ!」

フォルカーは矢を構えたまま、ぐるりと体を反転、背後を振り返る。
森から飛び出す黒い塊。反射的に弓を射る。
矢は獣の喉を突き刺し、勢いを殺した。地面に射落とされた獣は山羊だった。
息苦しい声をあげのた打ち回る。トリがその首を刈る。どわっと血があふれ、森の中に流れて行く。

「操作術…?いや……」

トリはマントを払い、胸に下げたいくつかの飾り勲章のうち、一つを首なしの山羊に近づける。
勲章の銀の枠の中、ガラス玉のような部分がほんのりと金色に光った。
それは精霊力の探知機となっており、霊力や術反応の有無にいくつかの反応を示すのだった。

「特別、精霊術のような反応は見受けられませんね…精霊力は…、微量感じられますけれど」

戦場を見る。まさに、刻一刻と大群がこちらに押し寄せてきている。
その背後でワアアと声があがる。心臓を搾り取られるような怖ろしげな悲鳴、
見ると、メルヴァルツァ弓兵が珍妙な踊りを踊るように、くるくると回り、背を掻いている。
やがてつま先をくじき倒れる。口から泡がぼろぼろと吐かれる。
――着込んだ鎧の隙間から、一匹の蛇が這い出た。
フォルカーは短剣を抜き、すかさずその首を落とす。そして思わず頭上を見上げる。
この暗闇、森の木々の陰では……、

「まずい…森…フォルカー様、とにかくここを離れましょう。兵を移動させなければ…
 俄かには信じがたいですが獣共が統率を持ち、我々にあだなすと言うなら
 後方・森は獣の巣窟です。挟まれる形になる!」
「…動物は問題になるのか!」
「尋常じゃありません」

トリはそういうと、すっと戦場の一角を指差した。
トリが指差す先、鳥の群れが竜巻のように渦を巻き、兵を覆い隠している。
悲鳴も届かぬほどの羽音。渦の中に居る者が生身の人間なら、恐らくは破片と散らされている。
だがその声は鳥共の声と、羽音にかき消され、その地で何が起こっているかも解らない。

「…全軍前進し、前方のオッフェンレンツ領民を突破する方が容易いか!」
「否、領民の層の後ろ、内地から獣が津波のように押し寄せてきています」




・・・




「どういうことだ、こりゃあ」

「ああ…」

「焼け出されて、逃げたのか――?」

「いやちがう、逃げ惑っているんじゃあない。だってむこうは」

「戦地へ向かっている!」

「獣達は戦地に向かっているんだ」


余りの戦況に内地へと逃げ帰った者達と、すれ違い、鬼気迫る勢いで獣が走り抜けていく。
大群で飛行する鳥たちも器用に、オッフェンレンツの民を避けて飛ぶ。
振り返る。遠く獣達が、鉛兵に突撃するのが見えた。



「…精霊の加護だ」


誰とも無く、呟いた。

動物達は恐れない。生首に恐怖する事も、戦慣れしてないあまりの乱れも無い。
群れで狩り成すような獣達は統率等本分に違いない。
『精霊の祝福がオッフェンレンツに味方している』その様な想いは空気を伝染し、
逃げ帰った者達も、ばらばらと、やがて強い意志を持って戦地へと踵を返す。




前線近く来ていたメルヴァルツァ兵は、獣の動きに目を凝らす。
そして竦む、脅威だった。
動物の恐ろしい勢いも脅威ではあったが、それ以上に驚くことは
動物達が互いに――もっと言うなら、レンツの民と協力しているのだ。
蝙蝠が顔を覆う、それを人が射殺す。栗鼠が足を取る、転んだ所を人が打ち据える。
熊と人が、前後から鎧を締め上げる。奇襲を仕掛けようとしてる者を見つけては、狐が声高に鳴いて知らせる。
不気味を感じる間に、その視界が、体が持ち上がった。
気がつけばそこはトナカイの角の上だった。鋤の刃が、目の前に迫っていた。


・・・

「獣は人間に牙を剥かぬのか!?」
「そりゃそうでしょう!狼と兎が協力して熊と人間が協力せぬ道理はありません。オッフェンレンツ民とメルヴァルツァ兵と区別がつくか否かですがどうも協力している様子から解るらしいオッフェンレンツの民を殺す気はない、さすると津波の勢いを殺すためには前方のオッフェンレンツ民を生かして置いた方が良い、群れたトナカイやらの馬力は凄いです、このままではひき殺されてジエンドですよ!」

「………ッ」

判断を迫られるフォルカー、聞いた事も無い騒がしさ、熱くなっていく頭に
一際通る遠吠えが聞こえた。声の源を探し丘の上を見上げる。そこに巨大な猪がいた。

雄叫びを終えるとも終えないとも、猪は柱のような牙を振り回し、丘に立ち並ぶ弓兵達を蹴散らす。
次いで猪、うりぼう、大小様々の猪が木々の隙間からブオオと鼻息荒く砲弾のように飛び出し、
メルヴァルツァ兵にぶち当たっては、そのまま諸共崖を飛び降りていく。
ばらばらと、掃われた埃が少しずつ舞い落ちていくように、
ばらばら…人も猪も、勢いから飛び出し、空中にもがきながら墜ちて行く。

「…尋常じゃない、人も獣も狂わすなんてフォルカー様、キワコは魔女ですかね」

ピシャリ
引きつらせたフォルカーの頬を、雨雫が打つ。

「いかが致します、フォルカー様?」
「…、トリ、どうする、お前なら。この窮地どう立ち回る?
 レンツの民を勢いを殺すのに利用し、先に獣を仕留める、しかし遠隔攻撃用の弓が整わぬ。
 丘の上の弓兵部隊は壊滅状態…或いは後方を先に整備し、メルヴァルツァへ一時撤退、
 仕切りなおしメルヴァルツァ本陣で全ての獣の部隊を仕留めるか…」
「フォルカー様…、それは」

「試験ですか?俺が司令塔として適切な指示を出せるか。
 それともこの俺に助けを乞うているのですか?どうすればいいかわからなくて」
「ふざけている場合か、トリ!」

「……。」

「ご心配無く。
 言いましたでしょう俺は『侵略戦向きの術士』だって。それに『人質がいる』。
 メルヴァルツァへ撤退という選択肢はありえません。」


「折りよく雨も降り始めました。さあフォルカー様これを」

トリはそう言うと、己のマントを取り払い、フォルカーに押し付け寄越す。

「防水素材ですよ!雨具、フードついてますから被って下さい」




トリは馬に飛び乗ろうと、手綱を引く。

おかしかった。通常なら従順に自分に従う馬が、ぴくりとも動かない。
硬く強張った首は戦場の方を向いて逸れず、黒く塗れた瞳は戦の明りを映していた。
トリはもう一度手綱を引く。馬がぶるっとひとつ首を振り、項垂れた。


「…
 …そうか…」


 思い起こす。
 女、キワコと名乗るその女。その女と出会った時の事。
 女と馬が中睦まじげに頬と頬とをすりつけ、親密な口付けを交わす姿。
 それ以来元気を無くし、食欲も失せ、弱っていく 正体不明の病…獣を狂わせ、戦に借り立てる女
 ――『リンゴスター、お前』 『恋に落ちたのか?』



トリは一度顔を伏せる。だが一呼吸と待たずに顔を上げ、


「選ぶがいいよリンゴスター。
 お前は僕の戦友か?それとも、あの女の恋人か?」


馬は首を上げる。駆けるともなく、トコトコと2、3べんそこらを動き回り
戦場へ首を向け、そして――
再び頭を垂れた。トリのつま先に鼻をつけるように寄せる。
そしてすっくと身をただし、己の側面をトリに向け、大人しく静止した。
トリが手綱を握る。前へ引かれれば前へ、後ろへ引かれれば後ずさり、従順に従う。





(ぶるるっ… …。)
「…それでいい。」





「それでいいんだよ、リンゴスター…」






トリは馬具に足をかけ、一息にその背に飛び乗る。
呼応するように馬が身震い、高く声をあげた。









「駆けろリンゴスター!
 何本矢を受けようとも、決して歩みを止めるな!!
 血涸らし、精根尽き果てるまで、
俺の為に走れッ!!」



・・・

戦場を一閃の光が走る。
なぎ倒される巨体、トナカイの角の隙間を縫い、馬が駆けていく。
飛べ、走れ、素晴らしい手さばきだった。


 ジリリリリリリリリリリリリリリリン!

コンパクト型のトリの術具 鉛兵を操る<サトゥルヌス・コール>の指令の音が響き渡る。
音の振動にあわせ、今まさにレンツの民に切りかからんという兵達
なんとか獣を押さえ込んでいた兵達、破壊され転がった兵達 
戦場の鉛兵達が次々に砕け散っていく。音源の近くから順に、鉛兵達が瞬く間に姿を消す。



「雨呼び草を燻せ!」


燻し草、草の束で出きた松明のようなものを掲げ、馬は駆け回る。
又、荷台に松明の沢山詰まれた馬車が、走り始めた。
車輪は小石に跳ね上がり、今にも転びそうな、とどまらない勢いで戦場を駆けていく。
煙を大量に吐き出す、アカデミーの錬金術師の道具。
煙は雲をとらえ、降り始めていた雨を強く、大粒に変えていく。
ほんの数秒 瞬く間に雨は激しくなり、戦場に降る。



「雨…」


「雨」


雨。どしゃぶりの雨、肌を叩きつける雨、凍える雫が体温を奪う。
息が白くなる、歯の根が鳴る。火が消える。煙だけが蔓延する。

ジリリリリリリリ!

ジリリリリリリリリリリン!!

霞む視界にサトゥルヌス・コールのけたたましい音が鳴り響き、天を震わす。
雨、次に雨は鋭い痛みを伴った。
矢でもない、かすかな傷みを不可解に重い、レンツの民が空を見上げる。
振ってくるのは――針の雨だった。
鉛兵を構築していた鉛は砕け、砕けた鉛は雨に混じり、鉛の雨が、戦場へ降り注ぐ。
ガラスの破片のようにとらえ難く、時には槍のように太く、甘い花の匂いのする雨。
とても目を開ける事はできない。森から這い出た獣の軍勢は苦しみ、雨避け森へと戻り出す。


人々は着ている物を被り、何とか視界を確保する。
戦場を閃く光、鎌を持ち、縦横無尽に駆け回る俊足の馬。
鉛の雨はその馬の周囲を避けて降る。それは遠めに見ても明らかだった。



「精霊術士…!あいつ、あいつだ!」

「妙な術をつかってやがる!」
レンツの民は雨の突き刺さることを耐えながら、なんとか踏ん張る。
その腕をしゅるりと蛇が這った。蛇もまた、突き刺さる雨に耐えながら
腰にくくりつけられた矢を加え、農夫に手渡す。
日頃ののら作業で陽に焼けた、力強い男の腕、その腕に
細かな血が滲んでは、雨に洗い流され、洗い流す雨もまた、その身を切り裂いていく。


「ねらえ、ねらえ!!」

「精霊術士を、仕留めろ!」


男達は、獣の助けを得ながら必死の思いで一本、また一本トリに向かい矢を射る。
向かい来る矢。
トリは鎌でそれを切り払い、燻し草を掲げ、馬を走らせる。
雨が避けて通る為にトリの燻し草はまだ炎をたたえ、くぐもったオレンジの光を放っている。
土砂降りの中ぼんやりと見える光、閃く鎌の刃
それを目印に、レンツの民は弓を引く。雨脚の強さでレンツの民の狙いは精確さを欠く、
だが矢は、矢もまたそれは雨のように降り注ぐ。やがて一本の矢が馬の尻を射抜く。
馬が痛み、苦しみ、高い声を上げる。


「リンゴスター!」





「走れ!」




「走れッ!!」


トリは馬の腹を蹴り付ける。馬は、走る!
血を流しながら、苦しげに声を上げながら、足を庇い、それでも全速力で駆けていく。
ぬかるんだ泥を跳ね上げ疾走していく



(戦場一回りしないと…つぶされた鉛兵が回収できない!)


走る馬、射抜く矢、つきたてられる牙、抉られる肉、
走る馬、流れる血、目を突く角、乱れる息、
走る馬、跳ね上げる土、身を裂く剣、男の声

馬蹄が激しく地面に踏み込む、良い音。己の道を邪魔する物を蹴り払い、ただ一心不乱に眼前へ
倒れるように 飛び込むように 風を切り走る、走る、走る



矢が雨のように、トリを狙い放たれる。


・・・

頃合を見て、トリは馬にくくりつけた小型のランプに火を移し、
燻し草を捨て、ランプを通り過ぎ様にトナカイの角先に引っ掛けた。
そのまま雨の中馬を走らせ、鉛兵を回収する。
回収した傍から鉛は雨に溶け、刃となって土地を壊していく。



・・・

よた よた 、よたよたと歩く。もはや走る力は無かった。
刃を踏み抜いた蹄は割れ、骨がぐらぐらと定まらない。
足を折り、座り込む。荒く、水っぽい息がはかれる。
既に地べたに腹を着いているというのに、尚も降りず、矢の刺さった腹を蹴り付ける。
蹴り付けた傷口からドロドロと血が溢れ、トリの足首を濡らす。

「立て」

息が短くなっていく、ヒイ、ヒイ、と小さく声が漏れる。
手綱を引く。首はびくともしない。地面に横たわる。

「走れ」

喉の渇きに苦しみ、泥水を啜る。トリはそれを止めない。

「……。」

小さい上下も感じなくなった。石のように座っているような不毛な冷たさを感じて
トリはようやくその馬から降りる。
前に回り、まさに尽きようとするその顔を、歩み寄ることなく見下す。



「リンゴスター…」

(…… …)



見るも無残な姿だった。
競走馬として夢と欲を預けられた馬、
何百の庶民の金をかき集めても靡かせられぬサラブレット。
毛並みは血に濡れべたつき、折れた後ろ足はひん曲がり、目は曇って歯は折れた。
何か静かな岩の塊のようになって、生物の美しい流動を失った黒い塊
雨に打たれて全身で泣く様に、ただそこに転がっている。
馬が何を望んだかなど解りはしない。子馬の時代 安静な日々 勝負と言う日々…
厳しい鍛錬を強いられ 恐らくうまいものの味も知らぬこの馬に
何か一つでも心ゆくものがあっただろうか?
血統も、生活も、何もかも人の手によって選択された





「これが、お前が選んだ死に様だ」





馬の心は解らない。その上馬は死んだ。死んだもの心もまた、解らない。
トリは雨に打たれる馬の躯を冷たく一瞥する。その中に勝利の輝きを見た。

自分達の様な血の者にも、意地を通すだけの誇りはある。それがどれ程ささやかな選択肢であっても






   (俺は一人でも、走れるよ。)




・・・


足を無くし、男は1人走る。小柄なトリでは戦場を移動するのには時間がかかる。
足だけでは駄目で、山登りをするように、倒れた獣の体を飛び越えるのにも手間がある。
けれどもそう難しいことではない。所詮それは移動するということ、だけだ。

息を切り、汗をかき、トリがメルヴァルツァ陣営と戻ってくる。
辺りは先程発った時とは様変わりして、血の海、人と獣が森の入りで、折り重なって死んでいた。


「フォルカー様!まだここにおいででしたか。森を焼き払って下さい!獣達を雨の元へ!」
「――何を言う!?目的を忘れたか、この資源を焼け野原になど出来るものか!」
「ハッ、何を馬鹿な。オッフェンレンツはもうおしまいです!
 この術が何かわかりませんか!?」
「針の雨…?」
「鉛の雨です。そしてトリカブトの血は毒の精霊力。
 ついでに錬金術師から買い取った瘴気の残滓を配合してあります。
 言ったでしょう、人質があると」
「――」


鉛毒
鉛の摂取を原因とする重金属中毒 鉛は血を阻む
鉛に汚染された土壌で育った植物、それを食べた動物や魚、その肉を食べた人間達に降りかかる
中毒症状は嘔吐、腹痛、ショック、痙攣、消化器症状、運動麻痺、昏睡、無感情…
精霊力はその毒性を強め――



「やめろトリ!目的はこの土地の豊かな自然だぞ!!」


うるさい!!俺は!やるからには勝負には常に勝つんですよォ!



ジリリリリン、サトゥルヌス・コールが声を上げる。
トリがそれに囁きかける。コールは、拡声器のように声を増幅させ、戦場隅々まで声を届かせる。



 《オッフェンレンツ領民へ告ぐ!
  今降っているのは毒の雨だ!これは土地を数世紀に渡り汚染する!
  作物を育てるとも、獣を狩るとも不毛!大地は汚染され、
  脳詰りで死にたいものの為の土地となるのだ!
  今なら間に合う、雨を止めて欲しければ今すぐ獣共を黙らせ降伏しろ!!》
「トリ貴様…ッ」
うるさいなあッ!!貴方の目的は土地!俺の目的は勝利!どっちか諦めろっていったら自分の心に従うのは当然でしょう!?というか俺は二人の目的を達成するのに一番いいと思ったからこうしたまでですよ!どっちも諦めてませんから!これでいいんですよ!ベストです!ベスト!
「16年…!騎士として育てあげられた恩を忘れたか!!」
だ か ら!雨具あげましたでしょオーーーーーーッ!?
積年の恩義はその雨具に詰まってますから!!俺は俺なりにフォルカー様を尊敬しています!大体ですね恩義ってのは感じられるとか感じられないとかは感じる方が感じる感じないを決めるんであって感じられる側が感じるとか!感じないとか!!

「コカトリス…!私はお前と言う人間を見誤っていたようだ…ッ!」
「大丈夫ですよフォルカー様300体分の鉛じゃ領土全体と言うわけには行きません!それにリンゴスターがめでたく栄誉の戦死を遂げたので戦場を回りきれませんでした回収できていない鉛も多くありますこの区域を諦めれば戦に勝てる、一部諦めて全部手中に収めるんだから理にかなっているでしょう」
「トリ!!」
「雨を受けた人や獣はしんどいでしょうねこんなド田舎辺鄙な所だ医療技術には期待出来ない生きようともがけばどうせ都市に助けを求める。見た所雨を受けたのは働き盛りの男達、治療代も嵩めば生産力も落ちる。オッフェンレンツはどの道単体では生きていけなくなる、勝とうが負けようがフォルカー様の思い通りになりますよ!ほらね」
「トお」
「鉛汚染の分布は後々一緒に計測しましょう。汚染地帯にレンツの捕虜を暮らさせ、あとの土地にメルヴァルツァ領民を移住させればいいんじゃないですか?緩慢に全滅させましょうよそれでいいじゃないですか俺はちゃんと頑張っているのに幻滅したとか酷いですよ」


「ねえフォルカー様」

「フォルカーさ」

おかしい、おかしな音、バリバリ音、振り向いた。
そこに光る、金色。金色の光が二つ、ぐるぐるぶれている。
けだもの
バリ、バリリと頭から 雨具ごと、フォルカーを―――喰っている!



「フォルカー様――」


(ふ しゅ あ … …)



―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

いくつもの、一定の規格に沿った本。
年代の違いはあれど外見は概ね揃えられているそれらを、
円陣を組むように開き置き、その中央に男が一人座り込んでいる。

足元には、これもまた円陣を組むように小さな紅茶の缶の様なものが並べ立ててある。
男はその内『Lenz』とラベルの貼られた缶に手を伸ばす。
缶の蓋を開く。
わっ、とびっくり箱のように、焦げ茶色のものが飛び出した。
それは文字だった。そして、文章だった。

続いて 並べられた缶達を、カン、キン、コン、と左から順番に杖で軽く叩く。
缶のラベルは『Etgal』『Abel』...

エトガルの調書 アーベルの調書  サルバトールの調書
ボニファの調書 フォルカーの調書 コジマの調書 レンツ史書

叩かれた缶からは同様に文章が飛び出し、横並びに線を紡いでいく。



参考資料:協会『精霊術について』
定義された精霊術とは、
体内に秘められた精霊力を引き出し、攻撃や防御・はたまた道具作りや心身の治療に役立てる技術。
本来は肉体的に魔物に劣る人間達が、対抗の手段として編み出したと言われている。

そういった精霊術の素養は、産まれながらに持っているケースが多い。
全てがそうではないにせよ、この土地においてはそれが根深い。
オッフェンレンツ家は血脈に火の素養を持つ。
精霊力・あるいは『オッフェンレンツの血』は、熱を呼ぶ技術に産れ付き親和性を持つ。
又、例えば『セロシアの血』は予めその精霊力を金属に流し込み精製しておく事で、自身と対象を同調させる技を持つ。
ゴブリン等の魔物も、一部は生まれながらにして精霊術に準ずる力を持つ。
精霊術は、技術の訓練による精度の高まりはあるにせよ
素養自体は産まれながらに血に息づいていていることが多い。


参考資料:ボニファ、トリ『キワコの精霊術について』
キワコは産まれながらに精霊術・それに準ずる力を持っていた。
トリの分析によると、<妖精と合体する>という力
ボニファは、正確には<ものもののの結びつきを増幅させる力>であると言う。

キワコもまた幼い頃からその素養を持っていたのだ。
先々代領主・ヨハンによって地下牢に閉じ込めている時からその力があった。
ボニファによると、キワコは地下牢で、
寂しさを紛らわす為に<命の種>と<家具>を結びつけ異形の友人を作り出していたという。


参考資料:レンツ史書『妖精と異形について』
レンツ屋敷にひしめく<妖精>と<異形> 二つは似て非なるものだという。
両者の活動に違いはほとんど見られない。その違いは産まれ方にあると記されていた。
精霊が人と自然の力との純粋な仲介者・若しくは大いなる自然の恵みそのものとするならば、
<妖精>はそういった純粋な存在を産む為に生まれる霊的余剰、いわば精霊の絞りカスのようなもの。
だから彼らは下等でよこしまだとされる。利己的で、その働きは常に己の利の為である。
一方の<異形>は、<命の種>と物質が人為的に結びつけられることによって産まれる霊的生物である。
命の種とは?――動物・及び人間の<受精卵>のこと。
人間が最も霊的存在と質量の近い瞬間に、物質と結びつける事で異形は産まれる。


本と缶、そして宙を舞う文書の円陣の中央に座る男が首をひねる。

(……。)

「レンツ史書に記されていた法則はそこまで。どのようにして結び付けるかは記されてない。
 その様な技術がレンツ家に継承されているのか…、いや、おそらくは結びつけるには
 キワコさん、もしくはその血脈に遺伝する精霊力『キワコの血』が必要だった)

参考資料:ボニファ『妖精の里帰り・動物の巡礼について』
オッフェンレンツ邸使用人としての任を終えた妖精は、
年の変わり目、停止の数日にキワコに取り込まれる。
そうして、キワコは彼女の持つ『ものものの結びつきを増幅させる力』によって、
かれら、妖精らを、キワコ自身の卵と結びつけ こどもにしてこの世に産み落とす。
妖精達はネズミやウサギ、鳥、魚…実に様々な姿でこの世に生を受ける。
オッフェンレンツで役目を果たす事で妖精は肉体を得る事が叶う
この屋敷に大量の妖精が居つく『利』とは、このことであると思われる。

そして13夜の終わり、オッフェンレンツの森や野原から様々な動物が列を成し、
レンツ邸のキワコを尋ねる。里帰りを終えたキワコは今度は彼らの相手をする。
これは以前キワコによって肉体を与えられた霊的存在達が、1年に1度、母親へ会いに来るものである。



(卵を妖精と結びつけ受精する。
 受精卵を物質と結びつけ異形とする。…)

(…妖精が何に価値を感じるのか、僕には解らない…けれど彼らが
 肉体同士の繋がりを重視するなら、…、肉体がなくては不十分なのではないか?
 つまり何故肉体を欲しがるのかというと、やはりそれは、キワコさんと交わる為とか…、)

参考資料:エトガル『地下牢について』
エトガルは若い時分、レンツ邸の地下牢で3ヶ月を過ごした。
エトガルが案内されたのは牢らしいつくりを持たぬ単なる貯蔵庫で、
人間の尊厳を傷つけるものはなく、人の寄り付かぬ部屋を貸したというに過ぎないのだろうと言った。
地下で暇つぶしにワインの瓶で音楽を奏でていると、どこからともなく子供の声が聞こえ、
それはついには姿を現し、姿を現してからは急速に距離をつめ
少女でありながらエトガルの体を求めた。

そこにも妙な点はあった。レンツ邸の地図には<地下牢>があるのだ。
こういった領主邸に地下牢があるのは珍しいことではない。
エトガルにそうしたように、身分ある罪人や知人の罪人を預かることはままある。
けれど貯蔵庫ではなく、檻と鉄枠に閉ざされた牢らしい牢が一部屋作られている。


(エトガルさんが地下牢に入れられなかったのは、
 既に地下牢が、使われていたからだ。キワコさんを牢に閉じ込めたのはヨハン、
 ヨハンの存命中、マテウスはそれに逆らうことはしなかった。…)


(キワコさんは孤独な地下牢で、食器や椅子、本に命を与えた。
 精が必要なのは、物質に命を与える為…?)



参考資料:アーベル、コジマ『キワコの道について』
外観より入り組んだレンツ邸で、キワコが言った<キワコの通っても良い道>
アーベルが邸に招かれた時に通った道や、この書庫に続く道など
邸地図に乗る正規の道は、キワコ曰く<キワコの通ってはいけない道>である。
抜け道のようなキワコの道。歩めば歩むほどに暗くなっていくような閉鎖的な道という。

恐らくは上流階級らしい、使用人用の隠し通路であるが、
手元の確認できないような暗い道を作るだろうか。



(……)


(イスや皿に命を与えられ、壁や床にはそれが出来ぬ筈がどうしてある?)

-------------------------------------------------------------------------------------------------


妖精、妖精が、迫っている。暗くて目が効かない。
感情に質量を伴って押し付けられるような、痛みでも、くすぐったいでもない感覚。
強制的に戸惑いを感じさせられるような、そういった…彼らなりの、攻撃
それが果たして攻撃として意味を成すのかは解らない。
だが耳に聞こえるジャリジャリという音、キアアアアアアと叫ぶ叫び声、視界も暗いとなれば、
これは厳しいものがあった。さわさわと触れるでもなく体を撫でる鳥肌の立つ感触。
気味悪さを振り払うのは、手の中の重みと温かみ、この子を早くここから連れ出さなければいけないという意志。
どれ程耳鳴りが酷くとも、女の声は聞こえた。
耳という器官が2対あって、片対の耳が妖精のささやきを、
もう片対が女の声を聞いているかのように、明瞭にきこえるのだった。


「サエトラ、キワコ、行きたい所があるの。」
「――どこ!?」
「真っ直ぐよ。つきあたりを左に曲がって。階段をおりて。柱を三回まわったら、
 お二階の廊下に出るわ。そしたらキワコの部屋へ行って。そして」


ぶわり、羽根の影のようなものが目の端に映る。見ても何もいない。
だが水鉄砲のように、鉄をのばしその場所を凪ぐと、何か不安感が拭われる。
サエトラの鉄の中に宿るセロシアの精霊力は、いくらかは彼らに触れるようで、
鉄をそうして振り回すと、ジャリジャリと言う音が遠のくのだった。

天井から何かが落ちた。相変わらず目には映らないものの、ボトリという音が聞こえたのだ。
ボトリ、音が近い。天井から何か落ちてくる。サエトラは女を抱え込み、
己の背で何かを受け、女には触れさせまいとする。

「キワコ、平気!?」
「…平気よ」

走る。大股に、かつかつと硬い靴の音が廊下に響き、反響する。
角を曲がるとその道には絨毯が敷かれ――敷かれたカーペットが不自然に盛り上がり、
そのふくらみは滑るようにしてサエトラの足元に向かってくる。

サエトラは痺れ始めた腕に力を混め、女を抱えなおす。

数段飛びに階段を降り、言われたように道を進む。
髪、キワコの髪を伝い、カタカタ、コチコチと、何かやどかりや、甲殻類、そういったものを思わせるなにかが無数に這い上がってくる。
靡く髪が透明になる、透明が増していく… 後方、透明な暗闇に向かって、突っ張る…

「キワコ」
「ごめん!」

しゅららら、鉄がハサミの形をとり 引っ張り憑かれている幾束かの髪を切る。
つり橋を落とされたように妖精ともども、髪が後ろに流れて行く。

サエトラは女を抱えたまま、必死に駆け抜ける。
女はじっとして、少しでも負担にならないよう、控えめにしがみ付いている。





・・・

サエトラは扉を体当たりするように押し開け、部屋へ飛び込んだ。
勢いを殺すように足の側面で滑り込む。サエトラの服を女が引っ張る。

「……あ……はあっ、キワコ、つ、ついた …よっ!」
「エエ…。下ろして」

女は、白く円やかな、つま先を音も無くしっとりと床に下ろす。
そして、壁に向かって歩き出す。儚げに指される人差し指、力もこめず壁に触れる。

壁が一息、ぎゅっと中央に皺を寄せ
次に波紋を広げるように、グッポリと口を開けた。
サエトラは目を丸く、その光景を見る。
壁。材質は木のはず、骨組みは鉄骨かもしれない、壁紙だって張ってある、なのに
全てが一緒くたに、解けたクリームのような生柔らかな皺を寄せ真っ黒い穴を開けているのだ。
穴の縁がほんのりと白い光を発している。神秘的といえば、神秘的な光景であった。

女は事も無げにその穴に入っていく。


「っ、キワコ!」

サエトラもそれに続く。通り過ぎる瞬間、目を凝らすと
穴の断面に当たる部位が、細かくうごめいていた、
ほんのりと光る白いものが全て目だと解ると、叫ぶよりも先に目を逸らし、女の手をとった。


「キワコ、これは、何!?」
「サエトラさっきも通ったでしょう…キワコの道よ。けれどお部屋からが一番近道だから…。」
「キワコの、道…?」
「ええ。 お父様、お言いになったの。キワコにお屋敷の地図くださって…。
 『キワコ、お前は』『この全てを、許可無く歩いてはいけない』って」


・・・

二人は歩く。そこが酷く暗い以外は、一見して屋敷にある普通の廊下と変わらない。
突き当たると、女は再び壁に触れる。上下に裂ける様に、壁が口を開ける。
5度ほどその様な事があって、やがて、開いた口の先は、
長い廊下の道半ば。
二人の真正面に、扉があった。


「ここよ」


扉は古びたもので、黒ずみ腐っている。
何か隙間から黒い汁が漏れ出、もうそれも乾いてこびり付いている。
埃かカビのなりそこないかわからないものがベタつき、色とりどり、その液体に付着している。
匂う木製の板、それを支える鉄の枠組み。錆きり、珊瑚のように不規則な模様を描く。
ああ珊瑚礁のようだ。最も汚く、最も気味の悪い…

いつの間にかジャリジャリという音も失せ、その代わりに耳が痛くなるほどしんとしていた。
荒廃ぶりからはこの部屋が何年も開かれていないことが解る。
異様な空気が漂っていた。廊下の端と端はもう本当に何も見えない暗闇の溜まりで、
何故だから扉の周囲だけ、ぽっかりと明いていた。




「――キワコ、この部屋は…?」



「お母様の部屋」





-------------------------------------------------------------------------------------



「…待てよ、この名前どこかで――」

金属片を指で撫でる。
錆付いてはいるが、小さな彫刻の凹凸が感じられた。金属片に掘り込まれた名前…

確かに聞いたことがある。

「――思い出した!I、L、L、A!イラ、イッラ、イーラ?イラ…と言ったかな、キワコは!」
「イラ?」
「御曹司は知らないかい?イラ……キワコは母親の名だと言っていたよ。
 かー、我ながら良く思い出せたねえ。」
「キワコの…母親」



「首輪にですか?」


コジマは金属片から手を離し、顔を上げアーベルを見返す。



「そう言われてみりゃ…」


-----------------------------------------------------------------------------------------


すっかり枠とくっついた扉を、二人はベリベリと音を立て、開く。白い埃が足元を流れる。
中は物置のようなつくりだった。寒々しく、屋敷の中だと言うのに野ざらしのような荒れ方で、
全体に土気染みていた。一つの家具、又物置らしく収納された物もなく、
枯れた藁の様な草の様なものが灰色になってただ床に積もっている。
人間が一人入れば窮屈さを感じるほどの狭い物置、
狭い部屋の中央に歩み、女は埃も何も気にせず寝転がる。
すべらかな髪が水に落ちるように沈んでいく。

女は、しっとりと目を瞑る。小さな声が囁く。


「お母様……。」


それきり、しんとしてしまった。
眠りにつくように、静かになった。耳鳴りもしない。
何もかも、時が止まってしまったように穏やかになった。
サエトラは女の顔色を伺おうと膝を着く。その膝に何か硬いものが当たった。
構わず体重をかけるとペリリ、パキ、と音がした。
かがみこみ、覗く。女に目を凝らし、虚を突かれる。
女の寝転ぶ先。枯れ草の奥。埃よりも白く、硬質なもの


ほ 


『骨』



…骨だ!息が止まる。サエトラは半身、身を引く。
女が擦り寄るもの、その曲線はアバラ骨の形を持っていた。目線を沿わす。
あそこにアバラ、ああ、脊椎、つづいている、では自分の足元には、
己が先ほど踏み抜いたものは、
無意識に呼吸が荒く、背を壁につける。手が壁を彷徨う。
それが何か、もうほとんど確証はあるのに。本能のように枯れ草を払いのける。

間違いない。
この部屋は、一つの棺だった。
だから扉が貼り付くまで、閉じられていた。
この狭い部屋に得体の知れない キワコに言わせるなら『母』その方が眠っていたのだ。

サエトラの目に涙がこみ上げる。
恐れ?悲しさ?おぞましさ?理由はわからない。涙をかみ殺し、言葉を作る。


「キワコ…」

「君のお母さんって」



サエトラの声に応え、女が目を開ける。
女は身を捩り仰向けに寝転ぶ。細い指を天にのばす。目を細める。



「サエトラ……、…キワコ、思い出したわ」







            低い     低い視界       藁の波に埋れる程の弱い視界

              一部屋でさえ広く感じるほどの視野  途方も無く遠くに思えた 

            空   空とも言える      見上げる    扉の…「鍵」。

       あの鍵さえ…  あの鍵さえ外せれば…  世界は開かれる。 あの鍵さえ…


                    視界   よろつき、    手をついてすがる。

                   腕をいっぱいにのばしても   とてもとどかない。

       ずりおちた跡      手をついたあと     この間の跡よりもたかい

                  体がおおきくなったようだ    いつか鍵にとどく







                        けだものの足では鍵をはずせない
                         妖精の質量では鍵をはずせない
                        指が必要だった 立ち上がる足が
                     肉体が 産まれた世界で憎まれぬ容姿が











         あの鍵さえはずせれば――私は産まれることが出来る!










「キワコ…自分で選んだのだったわ……
 この部屋から出る為に、キワコ…人間だって…自分で…決めたのだもの…」








「…キワコ、人間なのね」


「キワコ」

サエトラは何か、堪らなかった。思わず歩み寄り、女を抱きしめる。
何となくしか解らない。理解するのも怖ろしい。
そんな人生をこのたおやかな女が歩んできたのかと思うと胸が苦しかった。
サエトラは、
幼い頃から様々のものを観察し、その形態・形状を再現する事を日常としてきたサエトラは、
一目見たときから気がついていた。


キワコの縋る「骨」が、人間のものではないことを。

















         ちちをすい    ちをすすり     にくをくい    ほねをおしゃぶり


         おさないゆびが  かぎにとどく     きたるべき      出産の瞬間


         おやしきのみんなは     悲鳴と叫び声で     わたしのたんじょうを


         むかえた           だれひとり          祝福しては


         くれなかったけれど     わたしはようやく     そんざいしはじめた



「キワコ…。キワコお…」


サエトラは、女の頭を優しく撫でる。女は大人しく頭を撫でられている。
暫くそうして二人は抱きしめあっていた。

頭の落ち着きと共に、足の疲れをを感じる頃 不意に女が体重をかけ、歩んだ。
体格はしっかりとしたサエトラだが、信頼する者に押されたので、
何か理由のあることだろうと身を委ねる。二人は身を寄せ、女はサエトラを壁に押し付ける。
女が、サエトラの首筋に顔をうずめ、囁く。



「サエトラ、抱いて」


「―――。」

「キワコ、どうして……。」

女は壁に沿わしていた手を、サエトラの背に回す。
首筋を滑るようにサエトラに縋りつき、耳を胸に押し付ける。
母親の胸に甘えるように、心臓の音を味わうように、

妙な息苦しさ、雰囲気、サエトラの胸が早くなっていく。

  『………キワコ、サエトラの子どもも産みたいわ』

サエトラにはある考えがあった。

  『きみ、どうやって身ごもるの。わたしの子どもを』

(妖精を孕むといった時。
 彼女がわたしの子供を産めるといったとき 
 わたしの中に、…、途絶えつつある鉄のセロシアを、彼女に受け継いでもらう
 キワコに、鉄のセロシアを産んで貰うと言う考えがよぎったことはあった
 代々続いてきた、尊い才能の血統。わたしがそれを断つかもしれないということ…、
 わたしはどこかでそれに答えを出さなければいけない)



(けれど)

(こんなことは、やっぱりだめだ)

強い戸惑いで歯が鳴る。どういう言葉を選べば傷つけずに住むのかが解らず、
言葉が口の中で惑っているのだ。身体が強張る。
だけれでも、止めずには居られない。身を委ねる事は出来ない。
サエトラは女を引き剥がし、首を振る。女はサエトラを見上げる。
その顔には、諦めの色が浮かんでいた。

女がとん、とサエトラの心臓を押す。
その力で、しなだれかかっていた肢体は離れる。
離れた体は倒れるように扉の外へ出、そして――
そのままずぶりと床は口を開け、女を飲み込んだ。サエトラは素早く身を起こす。



「…キワコ!待って!」

慌て後を追い、女を飲み込んだ床を触る。
混ぜるように床を撫でても、力をこめて踏んでみても、床はびくともしない。

呼吸を整える。


「ペーター様、ごめんなさい!」


「妖精さん、君達と…本当は仲良くしたいんだけれど」


しゅらららら、目にもとまらぬ速さで、鉄が姿を変える。巨大なハサミを刃をむき、
床にふかぶか突き刺さる!刃が入った、ジョキリ、ジョキリ、床に裁ちを入れていく。
眩暈がしたかと思った。
屋敷が揺れた。サエトラの鉄は怯まない。
やがて裁ちは一周する、床板の抜けた穴を、サエトラは飛び降りる。
膝を付き、身構え周囲を見渡す。流れる髪。
キワコの髪を掴み、流れる方へと走る。

『道』がそれを非難する。


キワコの道 巨大な妖精 異形のわななき 屋敷がサエトラを非難している。



---------------------------------------------------------------------------------------------


(……)


(地下牢には、もはや 
 排卵を始めた――そしてエトガルさんという恒常的な精の提供者を得たキワコさんを
 閉じこめる力がなかった)


(壁や床に命を与えるのに、どれくらいの命の種が必要だろうか?
 話に聞く――キワコさんが執拗に精を求めるのは、もしかするとそう言った…、
 『目的』あってのことなのだろうか?
 始まりはもしかして…、精の提供者の確保…だとすればエトガルさんのような存在を
 得るまでは…、精の代わりとする目的で、妖精も多く呼び込まなければ、
 ならなかったろうか…?)


本の円陣の中に座り、顎に手を置きうんうん考え込む。
その背後、不意にあっと声えがして、振り向いた時にはもう遅かった。
思考に落ちこんでいた。人の近づくことに気がつかなかった。

「き、君は、一体」
「はっ わっ うわああ、あ、えっ えっ ああ」
「な――ここで何をしている!」
「わーーっごめんなさい、ごめんなさい!僕は…その、…なんというか
 ごめんなさい!」
「……
 ルーポー様?」
「あっボニファーツさ…お二人ですか?」
「ボニファ…、ヤークトヴァルトは三人で屋敷を訪れたのではないのか」
「…。私もその様に聞いておりますが…」

「僕は、その、…どう言ったら良いか…、その、ヤークトヴァルトの一派でも、
 メルヴァルツァの一派でも、オッフェンレンツの一派でもなくて…、
 なんていうか、フリーのライターです…」

「……紛争が起こるときいて、駆けつけたということか?
 だが余りに非常識だ。このような犯罪紛い…、いや、犯罪だろう。
 許可も取らずに書庫を荒らすとは。第一ボニファと知り合いで、無関係とも言えまい…」
「……そう、ですね…どう説明すればいいかなあ…
 ううん、ううん…順を追ってご説明、したいのですが、今、大丈夫ですか?
 恐らくそういう状況じゃあない…し、…」
「……ああ。次から次へと…、今宵はいささか考える事が多すぎる…」
「…あのぅ
 僕は、…、僕はでも、ペーター・オッフェンレンツさん、貴方の敵ではありません」
「…?」

「僕はボニファーツさんにも詳しくお話を伺いましたし…、
 ことによると…、貴方より事情に詳しく、なってしまったのかもしれない。
 オッフェンレンツの…それで、」


「僕は貴方がかわいそうだと思う。
 …お二人は何か、様々な、本当のことを知るためにこの書庫に来たんでしょう?
 もしかすると――何も知らないほうが、良いんじゃあないかな……。」



「だって、貴方は何もしていないじゃないですか。
 なのに貴方には沢山のことが降りかかりすぎる。
 オッフェンレンツ家に問題を呼んだのはヘラ、彼女を産んだのはヨハンで、
 禁を犯したのはマテウス、周囲が蒔いた種を…、その割を喰って…、
 貴方ばかりが責任をとるなんて…、そんなの、そんな必要はあるんですか?」

「…。ルーポー様、過去、私も真実を知る者はいない方が良いと思いました。
 けれども、今はそれは過ちであったのではないかと思います。
 知らないばかりに、現実に禍は訪れ…」
「…うん。それは、そうだと思うんですけど…
 なんか…、なんかあんまりじゃないですか…。
 僕はペーターさんがあんまりにもかわいそうで…
 誰かが真実を知るべきだとは思います。
 けれど、それが最も苦しめられている人である必要が無いかなと思うんです。」

「情報ってナイフや矢とかわりません。飛んできた時、それが自分を傷つけるってときに
 目を閉じたり、耳を塞いで自衛をするってことが、恥かしいことだなんて僕は思いません
 当事者より他人の方が、冷静に対処出来る、気がしますし……」
「……。」


三人、顔を見合わせる。
ペーターはルーポーの頭越しに、鍵戸棚の冷たい面を見る。あの中にある物…


「投げ出したって逃げたって、悪いことじゃあないって、思うんです。
 だって人生はまだ…長いんですよ…。知って人生に影を落とす事なんて、
 知らないほうが、マシだって…。」
「ペーター様……」
「………。」





 例えば父が己の思っていたような人物ではなかった事
 例えば本当は血の繋がっていたキワコを下女と見なしてきた事
 コルネリア様は抱いていた、見ていた、というキワコの言葉や
 ……
 …



そうだ、真実はどれも、重苦しく、真実という以上に、難題という姿で降りかかって来る。
誰にも対処されず、絡んだまま 問題を抱えたままどんどん時のみが過ぎ去り…
確かに望まぬ秘密は心を蝕む。
だが難題が重荷であるとして、誰がそれを背負う…他人に押し付けられるものなのか。
ペーターは思わず目を瞑る。
閉ざされた視界、暗闇の中で、糸のようなもの絡んだ。問題がひしめいて、己に語りかける。
解いてくれ
梳いてくれ、梳いてくれ、
目を開けると書庫の中にすら、キワコの髪が垂れていた。それはペーターの足に、音も無くすがり付いている。



「ペーター様…。私は……私は、ペーター様の御意思に、従います。」
「………僕も。本人が決めたことにはとやかく言いません」
「………私は、」








 オッフェンレンツ その鍵戸   開くべきか  開かざるべきか
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
                  第29話『Wachhund』
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

『メルヴァルツァ』


『メルヴァルツァ』


「オッフェンレンツは化物の郷らしい!」


びょろろと気味の悪い音を立て、血が流れ出る。それを浅ましく啜っている、人のような何か。
それの口が大きく開かれる。頬が裂け、顎が離れ、むき出しになる粘つく牙。
口内に溜まった赤黒い液体が溢れ出す。ふしゅあっ、と熱い息が漏れる。…
重々しい音を立て、フォルカーが崩れ落ちた。
うわごとのように、メルヴァルツァ、と繰り返すそれ。


  (身体に詰め込まれた屍肉。脳。スルスルと全身を巡り、居場所を見つけるような感覚。)


「…めるル、ヴぁるル、つァ、める う゛ぁる つ ぁ…」
「やい化物、人間の言葉は解るか?」


トリは胸につけていた勲章、精霊力の探知機をトモリに投げつける。
それはトモリの頭にあたり、こつんと小石程度の衝撃を与え、弾かれて泥の中に落ちた。
勲章は泥の中できらきらと虹色の光を発している。


「精霊術士の反応だ。…ペーターでもキワコでもサエトラでもないから
 徒守 十だろ?術士ということは君がレンツ軍の司令塔か?」


雨に切り裂かれた傷口が、切れたはしからしゅうしゅうと音を立て癒える。
…フォルカーの血肉を喰らうと、徐々に頭が、繋がりを持ち始めた。
まだわんわん頭は揺れているが、人の言葉が耳を通って頭に入ってくる。意味を持ち始める。
ペーター、キワコ、サエトラ、などの耳慣れた単語と共に、…


「こちらの頭はその男だ。それが死んだ以上戦う理由がない。
 フォルカーの事は見逃してやるから、戦いを止める様言ってくれ
 俺はやるからにはベストを尽くすけど、やる必要のないことはしない。」


トモリの脳でかたちを持ち始める声―神経に響いて人体を殺す、毒のようなあの声
『構え』『突撃』鉛兵の軍勢を繰っていた、と、思われる、あの声
己がかがみこむのは、散らばったメルヴァルツァ肉体の上…メルヴァルツァ…


「鉛毒が水に乗って流れると厄介だ。被害の拡大を防ぐのに川を塞き止めに行った方が良い。
 悪いのは俺じゃないぞ。それは逆恨みってものだ。
 当然するべき判断と努力を怠った領民が悪い。俺は親切に教えてやってるのにさ」


男は戦場を他人事のように冷たく眺める。


「全く、戦い続ければ護るに値しない土地に成り下がるって言っているのに!
 あの人たちは何の為に戦っているんだ?」


男の声、その声の持つ意味、聞こえてくれば聞えてくる程に胸をじりじりと焦がしつける
トモリの心臓が強く、拍動する。身がはじけ飛ぶような怒りで、たまらない!


「始めたから止まらないなんて。全員阿呆だな。
 人間の程度は皆猪と同じだ、走るしか脳が無いから前に進んで崖から落ちる」


矢よりも鋭く、振りぬかれた。体を揺らす衝撃。目にもとまらなかった。
息を呑む暇も。踏み込み、空気を引き裂き、トリは思い切り殴りつけられた。
崩された姿勢を、トリは鎌の柄を泥に刺し、勢い殺し、くるりと立て直す。
僅かに揺れる焦点を定め、己を殴りつけた者、トモリを睨む。
トモリも又、恐ろしく感情の篭った瞳で、トリを睨みつけていた。


(お前は、お前は何を、お前は何を!何をしたのだと!
 土地に、人に、他人の家に!オッフェンレンツに!!)


「……いっ …たぁ〜〜… 
       …つくづく……」
つくづく馬鹿な奴等だな!!理由もないのに何故争いたがる!?
 人間のそういう血の気の多いところが俺は嫌いだ!
 ――ああ!お前は人間じゃないか!」


 
ジリリリリリリン!!

けたたましい音。
トモリの耳がぴくりと獣のように震える。思考も追いつかず、本能的に飛びのいていた。
地面に刺さる刃。その姿をとらえた時には、刃は崩れていた。目を凝らす。耳を澄ます。
集積、雨の中今まさに構築されようとする、中はがらんどう、背は剥き出しの鉛兵。
姿を現すはじから、消えていく 未完成 半身の具現。
トモリは振りかぶり、戦闘靴でそれを蹴りつける。がつん、道中幾度も味わった感触。
鉛兵を蹴った時の硬い感触が確かに足の裏から、骨を伝わり脳に届く。
しかし、トモリが身を引くと同時にそれは崩れ、雨となり――流れ落ちた。

ぱしゃ ぱしゃ 

具現される兵は大気中の鉛が分散した為に、完成品を作り出すことが出来ない。
腕 盾 鎌 部位 部位を一瞬ながら雨の中具現化し、又崩して、別の部品に役立てる。
6体の未完成な鉛兵がトモリを取り囲み、一斉に刃を振るう。
寸分違わぬ太刀筋に、閃きは綺麗な幾何学模様を描き、それはまた雨になり流れて行く。
トモリは鎌の刃を靴に仕込まれた鉄板で受け止め、それを踏み場に鉛兵に飛びかかる。
ぐるる、ぐる、唸り、両手を伸ばす。頭を潰せ――だが、雨は降り、
鉛の兵は直ぐに壊れる。刃を受ける必要はあるが潰す事が出来ない、


(術士だ、本体だ、あいつを)

トモリはぎゅっと身を引き、大きく飛び上がる。パチンコ玉のように跳ね飛び、
取り囲む鉛兵達を放射状に飛び越え、一心不乱に術士――トリに飛び掛る。
のばせば届く手、狙い済ましたように寸前でまた、雨は兵の形を持ち、トモリを阻む。
咄嗟に靴の裏を向ける、キャランと冷たく刃同士のぶつかる音がする。弾かれ、飛ぶ。
勢い同士がぶつかり、相殺、勢い無く後方へ弾き飛ばし合う。
興奮で視界が妙にゆっくりとする。トモリの飛ばした鉛兵は、トリの頭の向こうで雨となり、地面に降り注ぐ。
空中に反射されたトモリを、掴む腕。締め付ける、鉛兵がのしかかり、トモリを泥の中へ叩き落す!

トモリは泥から這い上がる。姿勢を低く、唸る。痛み、目が開かない。
激しい雨音の中に、毛色の違う重い足音が混じった。


(鉛兵、いや)

それは、けだものだった。不意に森の中から熊が飛び出したのだ。
けだものは、トモリの唸りに後押しされるように猛然とトリに向かい、飛び掛る
雨の粒が平たく透明な、水のゆらめきを持つ
そしてもうそれは鈍い光を放ち、具現化された鉛兵は 熊の暖かい腹を割く。飛び散っていく。
断末魔の声を遮るように、後ろから別の鎌が姿を現し、熊の首を跳ね飛ばした。
毛並みにべとべとと血が染みていく。こびり付いた泥、血、死して2、3弁行われる痙攣、深呼吸。

毒まじりの泥は目に染みる。
やっとのことで目に入った泥を拭いさったトモリが見たのは
トリが、もぎり取った熊の首を忌々しげに掴み上げ、
足を振りかぶり…丁度ボールのようにして、森の中へ蹴り飛ばす姿だった。



「寄って来い蛮獣共。おかたづけは一度に済ました方が効率的だ」



(こ、の)


熊の首から吹き上がる血が雨に混じる。
さらさらと流れる血の雨、水たまりを跳ね上げる。暗い煙を立てる。
雨がトモリの頬を伝う。温い、血の雫、流れて、泥に混じって、灰色に散っていく。



( こン  の、  やろう )










「トモリさん」



「トモリさん」




頭が赤くなっていく感覚の中、トモリの耳が再びびくりと跳ねた。
雨音に混じってよくは聞こえなかった、けれど今少し遠くで、人間の声がしたようだった。
しかもそれは『トモリさん』と己の名を呼んだようだった。全身に悪寒が走る。いけない。

獣の軍勢の猛攻撃で、弓兵は戸惑い、なんとかメルヴァルツァ内地へもぐりこんだ
若者の小隊は生き延びていた。それがメルヴァルツァ総大将を目掛けて向かい、付近まで来ていたのだ。
トモリは来るなと叫びたかった。舌が縺れる。思うように動かない、
空気を、声を押し出そうとしてキィーーーーーーッと変な音が喉から漏れる。
そうして声にならない声と共に、トモリは弾け、策もなくトリに飛び掛った。




( このやろう、このやろう!! )


鬼の形相で猛烈に突進してくるトモリに、トリは笑い出す。
そして待ってましたと言わんばかりに鎌をくるりと回す。
雨が形を持つ。トモリの蹴り上げた水たまりがするりとトモリの足を引っ掛けた。
何が起こったか気付く暇も無い、勢いはそのまま、滑空するようにトモリはトリに向かって飛ぶ。
予想よりも低い視界。頭上を見上げる。
瞬く間に形成される鉛兵。頭上に迫っていたのは、トリと共に10本の鉛の腕が持つ、鎌の柄
――ああ振り下ろされる!
最早しようがなかった。トモリの鎖骨から太股にかけて、槍上の、鎌の柄が串刺しに貫かれていた。
トモリの腕が、だらりと落ちる。
地面に付きたてられた鎌。刺し貫かれ、雨と血にぐっしょり塗れたトモリ、
トモリの全身がずる、ずる、と、串刺しの柄を滑って、いる、





・・・


「あくまでも確実に。首を刈らなきゃな」


トリが鎌の柄に手をかける。
ぎゅるり
トモリの鋭く光り輝く瞳がかっ開く。目は血走り、獰猛なけだものの光を放っていた。
トモリはそのまま、地面に串刺し、全身が傷口のような状態でメリメリと音を立てながら
それでもトリの腕を掴みあげた。
握られた指に、怒りの強さを表すかのような渾身の力が込められる。
トリが悲鳴を上げる。素早く鉛兵が構築され、トモリを思い切り蹴り飛ばす。
その勢いで地面から柄が抜けた、トモリは串刺しのまま、身を低く、攻撃の構えを取る。
鎌は刺さったまま、引き抜かれていない。

(一度回収して再構築した方が良い)


先刻戦場を駆け回り、鉛兵を回収したように、完成した具現物を元素として回収するには精霊術の行使がいる。
トリは空いてしまった手に、術具<サトゥルヌス・コール>を握りなおす。
がりりり、トモリが走ると鎌の柄が地面を削る。
引っ張られ、トモリは傷口を押し広げながら、それでも再びトリの懐へ向かう。
向かい来るトモリの胸を、トリの足の裏が蹴り飛ばす。
再び後方に突き飛ばされながらも、トモリの両の手は血を噴出しながらトリの頭を掻き毟る


「こ、の…!」

際限なく、雨は降る。
雨がふわりと舞い上がったようだった。
次にはまた、無数の鉛の腕が形成される。強引にトモリを後方へと引き剥がしていく。
がつんがつん、ぱしゃり、鉛のぶつかり合いの激しい音、雨に溶ける音、
鉛のざらざらとした感触がトモリの皮膚を削る。
トモリの眼光は燃えるように強くトリを見据え、片時も離れない。
トモリは無数の腕の林で、なんとか身を捩り、全身をしならせ、トリの間合いを蹴り上げた。
戦闘靴の鉄板が、余りの蹴りの鋭さに刃となり、トリの手の内側の血管を裂く
痛みによる反射か咄嗟に指が落ちるのを恐れたのか、トリの指は緩む
――そのまま手の中に握られていたもの…術具はトモリの靴に引っかかり、高く蹴り飛ばされた。



「―――っ」



トリは俄かにその落下地点めがけ走り出す。
しかしもはや、鉛兵は雨に流された。鎌も姿を失っていく。
拘束が解けたトモリの、豹のよう瞬発力には叶わない。

トモリは壮烈にトリを突き飛ばす。
景色が何もかも姿を失い、線の束になる、怖ろしい速度。高い所から落下しているような気分だった。
そしてその果てにやってくるものもまた、激しい衝撃。
吹っ飛ばされたトリは、樹木に背を打ちつけ、強い痛みに思わず目を瞑る。
肺から空気が逃げた。息苦しく、咳き込む。
咳き込みながら視線を上げると、トモリが体をゆらめかせ、こちらに近づいてくるのが見えた。
…しかし背後は森、武器を持たず獣の群れの中へ入るわけにはいかない。
トリは咳払いをし、何とか声を取り戻す。


「術具を返せ。あれがないと毒の雨が止められないんだよ。」


トモリは返答しない。ただ、じり、じり、一歩一歩土を味わうように、トリの元へ近づいて来る。
それはまるで、もうどうしたって逃げることのかなわない手負いの獲物を追い詰める獣のようだった。
「…俺を殺すのは得策じゃないよ。ダメだよ。気晴らしに俺を殺してどうなる?
 戦の跡鉛毒の始末はつけれるか?治療法は解ってるか?俺なしじゃ…」

そして、トモリの口から漏れる唸り、呟きは、ひとつの人語もなしてはいない。
再び血が流れすぎたのだ。あたまが散り散りになる。トモリに残った思考は
たったひとつ「脳」 「脳」 が 「脳」  「脳」 … …

トリはそろそろと両手を挙げる。所謂降伏のポーズ、森の入り、暗夜、見えない顔色をどうにか伺う
トモリは歩みを止めない。鎌の柄を失った傷口から、ドボドボと血が流れる。

「俺の話、聞いてるか?」

距離が縮まりようやくおぼろげにかたちをもったトモリの顔、
目がグルグルと動き、顔の筋肉が、表情が定まらない。獰猛さだけがいっぱいに伝わってくる。
どう見ても――狂っている!


「…ッ 誰か!誰か来い!!徒守十の様子がおかしい!!こっちだ!」



トリが大声を上げる。良く響く声、喧騒と雨の中でも通る声、そして―


「トモリさん!」

レンツの民、若者の小隊。近くまで来ていた、彼ら、
トモリの姿を遠めに見止め、その身を案じていたらしき、男達の一人が、駆けつけた、
若者はトリの事はさておき、穴開き血吹き出す余りにも痛ましい姿のトモリに駆け寄る。
トモリの様子を伺おうとその肩に手をかける――


「うっ、……ひ、ひどい すぐ、手当てをしなっくっ…」

モギリ、
一瞬だった、レンツの民のその腕はまるかじりに、齧り取られていた。
トモリの喉。喉越しをあじわうように、ゴクリ、ゴクリとうまそうに筋肉が痙攣している。
トモリさん、トモリさん、と泣き叫ぶ声、おそらくは味方
夢中で食っている、おそらくは戦う原動力となってきたものを…

しかしまだ足りない、串刺しの傷が深すぎる。血の吹き出すのが止まらない
脳 脳 脳
トリは、レンツの民を貪り食う姿を見てようやく異変の重大さに気付く。
後ずさる。
立ち上がり、骨を噛み砕く耳障りなバリバリ音に耳を塞ぐ。


(兎も角『これ』からは――逃げなければ。こいつが捕食している隙に逃げなければ!)


トリは走り出した、だが、もう音を感じるような間もなかった、風はあとから付いてきた。
トモリは獲物を逃がさぬように、食事を中断して、トリに掴みかかっていた。
乱暴に引き倒し、転んだ所を足を掴み上げ、森の地面をずるずると引き摺っていく。
地面をかき、木々をつかみ、咄嗟に抵抗を試みる。だがどうにもならない。
土はぬかるんで抉れるばかり、細い枝は折れ、太い樹を掴む程の握力は無い。
声を上げようと開かれた口に、土が入る。咳き込む。酷く苦い、不愉快な砂の味、混じる、血の味
途中の食事、喰い散らかされた人の残骸の傍にまで運んでくると、
トモリはトリの身体を一息にぐっと持ち上げ、逆さまの体をそのまま地面に叩きつけた。
血塗れの顔、見たことも無い色に輝く瞳が、トリに迫る。


( … …ご ぽ、 ふ しゅう 、 ぎ、ぎぎ………)

「…ひっ」


「何を――何をしているの解っているのか、この僕が…しんじゃうんだぞ」


トリの声が震える、トモリにはまるで聞こえていない様子だった。グルル、グル、と、喉が鳴る。


「う」


「い、い やだ…」


「…ごめんなさい……」



 



「やだーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!!!
 死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死んじゃう本当に死んじゃう
 よおおおおおおおおお!!!ごめんなさあああああいいいい
 ああああああああああああああああああああんんんん!!」




「わあああああーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!!」








・・・
































「……」


輝く金色の光。
森の中、暗がりを、僅かな光できらきらと光る糸 宙に描かれる、風に靡く金糸の模様…


「トリ!大丈夫か!オイ!?」





「ひいいいいいいいいいいい ほらあああああああああああ
 やっぱり地獄におちたああああああああああああああ!!
 クソニワトリがいるーーーーーーーーーーーーーっ!!!」



「誰が地獄だてめ」


開かれた五指、絡み付く金。ガリョの手が、トモリを隔てトリを護る。

金のセロシア、ガリョ・スプモーニ・セロシア結界及び操作の術士…それは間違いなく、
ガリョの張った金糸の結界だった。レンツに身を置く従兄弟・サエトラの身を案じ駆けつけたはずが、良く知る鉛兵が戦を率先しているのを見て、前線を駆けずりトリを探す事になったのだ。

精霊術士、結界術。獣といえど分の悪さは判別がつく、結界の破壊には時間がかかる。
一刻も早く食事をしたいトモリは、ガリョの術の気配を察知して、踵を返し別の獲物を探しに飛び出していた。
ガリョは血塗れ、化物染みた、けれども人間に見えるそれの走り去るのを見送る。
そしてその走り去る先の景色に落ちる、サトゥルヌス・コールを見止め、
すぐさま金糸を編み出し、糸で絡め取り結界内に寄せる。
そうして己の手でサトゥルヌス・コールの泥を軽く拭ってから、トリに手渡した。


「ほら!ちゃんと持っとけ、何落としてんだよこんな大事なもん!
 うわひでえな、顔は腫れてるわ泥だらけだわぼっさぼさでお前…」
「やだーーーーーーーーお前に助けられるなんてこんな生き恥耐えられないよおお
 死んでやる!今ここで!お前に助けられるくらいなら死んだ方がマシだあーッ!!」
「久々に出たな!お前の死んでやる宣言…」
「僕は」
「『本気だぞ』付きか?」
「…ッ…クソ!!」
「つーかオイ!!トリ!俺は怒ってんだからな!」
「え!?何?」
「何じゃねーよ!!何やってんだよお前は!こん…っな所で」

そういうとガリョは拳を握り、トリに向かい振り上げた。


「やだーーーーーーーーーーーーーー!!」

「殴る気が失せるから縮こまるの止めろ!オラ立て馬鹿野郎」


しゃがみこんだトリを、踵で押すように蹴る。トリはそのままバランスを崩し、地べたに座り込む。


「歯ァ喰いしばれ」
「し…」






「仕方ないじゃないか!!」



「あ!?」

「仕方なかったんだよ!僕はトリカブトの子だ!
 騎士として稽古を付けくれたフォルカー様に忠義を尽くさない訳にはいかなかった!それに
 ブルメンタールとヤークトヴァルトの関係の為僕一人が己を通す事なんて出来なかった!
 仕方ないだろ!?僕が家に背けば、僕を選んだアルテミシアさんまで立場が悪くなる…!
 僕が守りたいのは僕じゃない、トリカブト!ブルーメンタール!アルテミシア!ジニア!
 形から入ったとしても…僕の家族だ!」

「……だ…だからって毒を使う必要があったのか!?」
「フォルカー様は劣勢で仕方なかったんだよ!僕は命令に背くことは出来なかった!」
「フォルカー、メルヴァルツァ領主は、どこだよ!」
「さっきの化物、見たろ、あいつに食われたよ!」
「……っ」
「恩返しをしたかったんだ!フォルカー様、トリカブトの家、ブルーメンタールの家。
 お前からしたら馬鹿なことでも、それで恩を返せるなら俺はしたかったんだよ!」

「……
 その結果がこれかよ…っ」


「ごめんガリョ…助かった……とは言わないけど…」
「言わねえのか」
「しかもちょっと行く先々に現れすぎて気持ち悪いし、
 この広い戦場で僕を見つけ出したのもかなり薄ら寒い気持ちがするけど…」
「オイ!
 お前はうるせえんだよ、術具も本人もギャアギャアキイキイ、マジ遠くまで響くからな!」

「でもお前の手は相変わらず綺麗だな」


「なんだそりゃ」

要らないものは捨てるに限る。セロシアの花も、僕にはもう必要ないものだ。
だから忘れた。忘れたから、どんなものだったか、思い出さないけれど。
でもなんとなく、水に浸した絵みたいに、ぼんやりとして、動かしたら掻き消えるものが
ふと頭に浮かぶことが合った。いわゆる思い出、
ガリョの手が僕を引いて歩いていく。
ガリョの手が僕の涙を拭う。
ガリョの手が僕を叩く。
ガリョの手が僕の絵を拾い上げる。
ガリョの手が僕の頭を撫でる。
ガリョの手は、大ぶりで指が長く、節が馬の間接と、その筋みたいで、
綺麗だから見分けやすい。手に注目することで、僕はガリョを見分けていた。
僕はガリョが苦手だ。正直な所、うっとおしい。でも昔から
奴の手。手だけは綺麗だった。


「昔から、お前の手は、僕を助けてくれていた気がするよ。
 なんかもうあんまり覚えてないけどさ」
「…なんだよ急に」
「へへ、戦場だし。お前なんかここでくたばるかもしれないからな。
 走馬灯の中に一個くらい良い思い出がないと成仏しなさそうだから褒めておいただけだよ」
「お前が俺を最大限に褒めると『手が綺麗』なのか?」
「そういうことになるかな」
「はあああ…お前さホント」




「あ、ガリョ…馬…あれお前の?」
「ああ」
「丁度いい、かしてくれ!」
「あ!?お前リンゴスターは?」
「リンゴスターは…
 …オッフェンレンツに消えちゃったよ。
 お前も見たろ?あの獣の軍勢をさ。サラブレットにも太古の昔にあったんだか
 血には眠ってるんだかなんだかしらないけれど、野生の血に目覚めたみたいだ」
「そうか…馬にとっちゃそれがいいのかもな。」

「…じゃ、借りるぞ。ここはお前に任せた。僕は屋敷へ行く。」

話しながら、当然のようにトリはガリョの金糸の纏を剥ぎ、己に捲きつける。
前線を突っ切って居住区を抜け、領地を横断して屋敷へ行く為に、結界術の施されたそれが
役に立つと知っているのだ。ガリョは特に咎めるでもない。


「何の為に?」




「戦を終わらせにさ」




トリは軽く体の土を払うと、勢い良くガリョの馬に飛び乗る。馬がブルルと声を上げる。
手綱を引く。馬は駆け出す。
振り返ることなく、大声を上げる。良く通る声だった。










「ガリョ!」



「本当はリンゴスターは死んだんだ!」




「―――」




「この先の岬で死んでいる。
 俺は二度とあいつの顔は見たくない。お前が葬ってやってくれ!」





「オイ!」








馬は瞬く間に小さくなって、声は届かない。








--------------------------------------------------------------------------------------------------


コジマのいた部屋をはなれ、地図に無い道をひたすら進む。
己の意識が危ういのか、道がゆらめいているようだった。

やがて辿り着いた、廊下の端。終点には扉があった。
もうそこ以上道が無いのだから、有無を言わさず戸を開く。
中から俄かに光が、灯りが溢れた。そこは暖炉のある部屋だった。

(……)

春前の夜、道中は寒く、凍えていた。アーベルは誘われるように暖炉の傍へゆく。暖かい。
背後から鈴のような声がかけられる。
ビクリと跳ね上がり、振り向いた先にいたのは、長い黒髪、一糸纏わぬ裸体に
暖炉の明かりが陰翳をつくる、輝かんばかりに美しい女だった。











 「ネエ」





 「キワコ.スキ?」
ミナミ [127]
「え、ええと……、その、
 協会の人間を利用して…その、よくない事をしたいという方も、いたり、しますし…
 その、色々と都合が…ですね」

店の中に入って大雑把にだが人目を避けると少し落ち着いた様子で。
市井の、さほど力も持たない人間が協会入りを果たした快挙の裏で、そんな情けない事情がついて回るのだった。
単純に権力に相応しい自衛の力がないのだが、「騒がれるのも、ちょっと怖いです」と眉尻を下げた。

彼の友人を友人と呼んだ件について叫ばれると、ひっと小さく悲鳴をあげて首を竦めた。
つらつらつらつらと、彼の一息は本当に長い。劇の語り部のようだった。
なんと口を挟んで良いかわからずにこくこくと了解の頷きをしつつ、その日、クロマ・セロシアの店主宛に『ご友人に先程、お会いしました。』などとぬけぬけと書いたので、しっかりとは理解できていない。

彼の機嫌がくるくると変わるのは道具屋にとって中々の恐怖で、特に誘いを断った際は目尻に涙が滲んだ。
すみませんと小さく唱え。


「えっ、会場に、入られるんですか……、そ、そうですか…、そう…なのですか…」

これはいつものような一回戦敗退はまずい。道具屋の中に初めて勝利の需要が生まれた。
そのまま彼の弁の勢いに押し潰されそうになりつつ、その日はお別れとなり胸を撫で下ろしたのだがーーー
後日、嵐はまたやって来たのだった。
状況としてマシだったのは、それが協会の敷地内であったことや、自身の職の依頼であったこと、などだろう。
霊玉を磨いたり合成したりするときに、人付き合いの恐怖が入る余地はない。
しかし問題は、受け渡しで。彼の反応を、心臓をどきどきさせながら見守っていた。

なので、その頷きと言葉には、全身の力が抜けそうだった。こらえた。とりあえず最低限のラインは超えたようだ。


「あ、ありがとう、ございます…」

「そ、そのように仰って頂けるのは誠に有り難いことで…
 ただ、私はその、霊玉については駆け出しですので……自信と申されましても…」

「………っ!?
 ええっ、あ、あ、は、はいその…、申し訳御座いませんその…」

相手の物まねと自分の駆け出し云々の台詞が混ざってぎょっとして、ぺこぺこと謝りつつ、更に真似を重ねて来るのを見れば酷く困惑した様子でそれを見、徐々に真剣な顔になって考え込み。

「………あの、…お好きなんですか、その、そういう…、人の仕草の、真似というか…
 …もしかして、練習してきて、下さったのでしょうか…」

さっぱり意図はわからなかったが、前回の品々しかり、彼は少し度が過ぎる人なのだと思っていた。
であるから、挙動のおかしさの向こうに真実はあるのではないかと…、なかったら茶化されているとしか思えまいが。

直後、まさかの霊玉をきっかけに、前回の度が過ぎた一件の真相がわかると、道具屋はぽかんとしていた。
(もの凄く体裁を気にしている)彼がそのようなことを言うのも驚きだったが、
こんな理由でつじつまはあうものなのか、という点にこそ道具屋は驚く。予想だにしなかった。
無論、霊玉が回収されることは気にしない。元々、自分のものではないのだし。
「…………」
「………………」
「あ、では、シーツと毛布と…、お水はちょっと難しいですけれど、あの、
 できるだけ、処分…しますね。ちょっと…勿体ないですが…。
 靴はなんというか…あれを普段使いは畏れ多いので、予備を使いますが…」
「その、嫌…ということは、ないですよ。
 ただ、ちょっと、勿体ないなっていうだけです…まだ使えるものですから。
 でも、誰かの気がかりになっているなら、それなら、替えて、元の物は処分致しましょう」

「そうしたら…その、大丈夫に…なりますでしょうか?
 他には、何か、お困りの事や、気がかりなことは、御座いますか…?」

例によって、彼の思惑通りの回答だったのだろう。
道具屋は彼の性質に関しては、特に嫌な顔をすることはなかった。
ジャン [387]
あっ、キワコさん……。
ちょっと、やめ……離れてください……。
服も……。誰か来たら……。
救う、なんて……。
己の髪に触れようとする手を払うことなどしなかった。
過ちを犯す以前にもそうだったように。

ただ、女のその手は、その指は、男にとって決して心地よいものではなかった。
ドル [589]
「いえその、キワコさんとお話できただけで十分といいますか、その」

本当はきれいなとか可憐な、とか言いたかったが舌が回らなかった。
堂々と喋れない自分が恨めしい。それでもいつもより勇気が出る気がして話を続け……
と思ったら既に立ち去った後。立ち去る足音を悲しそうに聞いていた。


     そしてその翌日。
     男はオッフェンレンツの噂を知る。

     さらに、翌日。
     ハイデルベルクよりオッフェンレンツへの道が続く、その始まりの門。


「さて、どうしたものかな」

男が手にしているのは手紙。キワコへ手紙を出そうとして、郵便が出ていない旨を告げられたのだ。
ともかく道を、と思い人すがら尋ねて門まで来たものの。

「……思っていたより、酷いのかもしれない」

門をみればオッフェンレンツより来る馬車や人がまばらに見えた。
逆にオッフェンレンツへ向かう影は全くない。
援軍がいればもうとっくに出発したのだろう。


精製士であるドルにはわかっていた。自分が今向かっても何もできないことを。
ならば。

「あ、そこの暇そう……おほん、カッコいい治癒術士の方。ちょっと、アルバイトしてみません?」



そうして声をかけること、数十回。
丁度オッフェンレンツへ行くか迷っている冒険者も多かったようで案外集った。


男の作戦はこうだ。オッフェンレンツが劣勢、だからこそ攻められているのであり。
そこに術士が数十人援軍にいく、と情報を流す。
門を出発した影があれば信憑性も増すだろう。
もちろん、実際にはいかず戻ってもらうつもりだ。そこまで雇える程のお金がない。
幸い霊玉精製の代行などで引きくけてくれる冒険者が多かったのには助かった。

実際効果があがるかは判らない。司令部にこの情報を届けられるかが不明だからだ。
これを聞いて退却なんてことは有り得ないだろう。
ただ、精霊協会に属する冒険者が少なからずオッフェンレンツを支持している。
この情報は確実にプレッシャーを与えるはず。
敗戦しても捕虜や領民への扱いがよくなるかもしれない。
その中に冒険者がいれば、特に。
少々楽観すぎるが、やらないよりはマシだろう。


「それに………案外、嘘じゃないかもしれない」

いくら期間限定のコミュ能力もらったとはいえ、所詮ひきこもニート。
ろくな報酬も約束できないのに、何人協力してくれるか。
そう思っていた。

しかし。


「すごいよ、ほんとうに」


    「おい、こっちは人数揃ったぞ」

    「おう、やるねぇ。こっちはもうちょい時間かかりそうだ」

    「へっ、賭けはオレの価値だな」

    「ん、賭けだと?おいらもかませてくれよ」

    「男ってホント賭け好きねぇ」

    気勢をあげる冒険者達。声をかけた人数以上に集っている。

    報酬など気にせず、二つ返事で引き受けてくれる者もいた。
    やはり同様に門まできたものの、どうすればいいか迷っていたらしい。
    そんな冒険者が、門でごった返していた。

    これが領主の人徳なのか、誰かの人気なのかは判らない。
    ただ、オッフェンレンツが愛されているのは間違いないだろう。


「すみません、お金が足りるかどうか」


    「いいっていいって。どうせ近くまで様子見に行くつもりだったからよ」


「無理しないでくださいね」

    「それこそ冒険者に言う台詞じゃねぇな」

「はは、確かに」

    「そっちこそ頼むぜ、陽動の意味ねえからな」

「そうですね。気合いれないと」

陽動、といってもやることは単純だ。精霊協会にありのまま伝えるだけである。
協会は冒険者保護のために動いてくれるはず。……そう、思いたい。
いざとなったら協会前で独りデモ行進か。
何かわからないけど、全身に熱い震えを感じる男であった。




(ハイデルベルクでなんだか一部の冒険者達が動いてるようです?)

イベント(武術会【混沌杯】)

イベント名
パーティ名
メンバーキワコ
 [E-No.96]
アルジェ
 [E-No.218]
レイス
 [E-No.759]
ミア
 [E-No.779]

イベント(ペアマッチ)

イベント戦の設定
「イベント登録」で「対戦相手指定設定」「霊玉の装備」などの設定を行えます。
イベント名
パーティ名
メンバーキワコ
 [E-No.96]
ロジーヌ
 [E-No.281]

クエスト

クエスト名
パーティ名
メンバーキワコ
 [E-No.96]
サエトラ
 [E-No.108]
ペーター
 [E-No.172]
トモリ
 [E-No.272]

プロフィール

クラス
種族
性別女性年齢???歳身長160cm体重50kg
ハイデルベルクから馬で二日くらいの距離に広がる田園地帯を治めるオッフェンレンツ家の使用人。
//関係人物// Eno108 サエトラ Eno172ペーター Eno272徒守

❀屋敷妖精をまとめるメイド長。
使役している訳ではなく、仕事の割り振りやトラブルが起きた時に仲裁するような緩い責任者。
妖精・精霊・その他霊的なものとの意思疎通が得意すぎて、人間と会話が成り立ち難い。
あまり外には出ないで屋敷の中に篭もっている。
ふわふわ天然 ❀ 動物好きで傷つきやすい。

✿ながい髪の毛は影のように屋敷中をするすると移動する
辿っていくとキワコが見つかる 踏むとどこかで物音がする アリアドネの糸ごっこもラプンツェルごっこも出来る

❆物質やエネルギー、ものものの「結びつき」を増幅させる術を使う。
妖精その他の霊的存在との交渉の他、
空気中に漂う精霊力と身のまわりのものを結合させて精霊もどきの異形を産み出したり、
妖精・精霊・異型の力を借りて(結びつき)魔物等を撃退する。





(アイコンNo9はEno281ロジーヌ・リアブチンスカさんの
 精霊伝説用フリーアイコンをお借りしています
 http://rainpark.sub.jp/palir/loeiconfree.html

(一言メッセージ用に
 Eno108サエトラ・マミテラ・セロシア/とぴさん
 http://loe.xpg.jp/v/result/r/e/e00108.html
 Eno172ペーター・リア・フォン・オッフェンレンツ/くろながさん
 http://loe.xpg.jp/v/result/r/e/e00172.html
 Eno272徒守 十/もそよらさん
 http://loe.xpg.jp/v/result/r/e/e00272.html
 のアイコンをお借りしています)

(アイコンNo10はパーティ掲示板用!)

アイコン一覧

12345678910
11121314151617181920
21222324252627282930
31323334353637383940
41424344454647484950
51525354555657585960
61626364656667686970
71727374757677787980
81828384858687888990

サブプロフィール

オッフェンレンツ邸 内装

-暖炉のある部屋


✿エンゲージ・リング
誰かと愛を結んだあと、キワコが度々、つわりのようなものを催し吐き出すことのある物質。真珠のような音の響き、湿った骨のような手触り、仄暖かい。不思議と取り落とす。手から滑り、逃げていく。
霊的な効能を持つ、有体に言うと霊玉。同調値は彼彼女らとの体の相性。
 Fairy-自爆 キワコ キワコ スキ キワコ
 Etgal-攻撃力吸収 理性と野心を吸い取られる
 Ringostarr-先制 早駆けの競走馬
 Arbel-結界斬 屋敷を破り連れ出そうとする
 Salvatore-フェイント 巧みに誘いをかける
 Volker-狂戦士 劣情に猛り狂い狩りに出る
 Cosima-不意打ち 恋人の隙を突いて連れて行く
 Mätthaus-火の支配者 血脈に遺伝する火の精霊力
 Bonifaz-火MPアップ オッフェンレンツの春
 Jean-シールドブレイク 貞操を破る/Eno.387

!?

ステータス

HP火MP水MP風MP土MPMP増加量スタミナ素質PGP
1400100010001812011,599
増幅放出治癒結界強化操作具現中和精製
46.2800000000

素質

スタミナアップ Lv1火MPアップ Lv5風MPアップ Lv5

精霊術

術No系統種別MPコスト対象
拡大
対抗
発動
術名
1増幅強打40------××トランス✿イッパイアシ
1増幅強打II80------××トランス✿イッパイアシ
1増幅強打III120------××トランス✿イッパイアシ
1増幅強打IV160------××トランス✿イッパイアシ
1増幅強打V200------××トランス✿イッパイアシ
122増幅突撃40------××トランス❀フユウハイスイ
122増幅突撃II80------××トランス❀フユウハイスイ
122増幅突撃III120------××トランス❀フユウハイスイ
122増幅突撃IV160------××トランス❀フユウハイスイ
250増幅憤怒40------××トランス✿ヒカリニラミ
250増幅憤怒II80------××トランス✿ヒカリニラミ
250増幅憤怒III120------××トランス✿ヒカリニラミ
250増幅憤怒IV160------××トランス✿ヒカリニラミ
251増幅咎斬40------××トランス✿ラヴモッパ
251増幅咎斬II80------××トランス✿ラヴモッパ
251増幅咎斬III120------××トランス✿ラヴモッパ
251増幅咎斬IV160------××トランス✿ラヴモッパ
2増幅連撃----40--××トランス❀ヨゴレモノオクチ
2増幅連撃II----80--××トランス❀ヨゴレモノオクチ
2増幅連撃III----120--××トランス❀ヨゴレモノオクチ
2増幅連撃IV----160--××トランス❀ヨゴレモノオクチ
2増幅連撃V----200--××トランス❀ヨゴレモノオクチ
212増幅乱撃----40--××トランス✿チャイミー
212増幅乱撃II----80--××トランス✿チャイミー
210増幅瞬斬----40--××トランス❀カーペットプワワ
210増幅瞬斬II----80--××トランス❀カーペットプワワ
210増幅瞬斬III----120--××トランス❀カーペットプワワ
210増幅瞬斬IV----160--××トランス❀カーペットプワワ
128増幅神速----40--×トランス✿ヒソヒソハネ
128増幅神速II----80--×トランス✿ヒソヒソハネ
128増幅神速III----120--×トランス✿ヒソヒソハネ
128増幅神速IV----160--×トランス✿ヒソヒソハネ
129増幅超神速----60--×トランス❀マドノキ
129増幅超神速II----120--×トランス❀マドノキ
129増幅超神速III----180--×トランス❀マドノキ
129増幅超神速IV----240--×トランス❀マドノキ
130増幅命中----40--×トランス❀ホコリヨウセイ
130増幅命中II----80--×トランス❀ホコリヨウセイ
130増幅命中III----120--×トランス❀ホコリヨウセイ
3増幅防御------40×トランス✿プラプラ
36増幅治癒--40----×トランス✿スキスキ
36増幅治癒II--80----×トランス✿スキスキ
36増幅治癒III--120----×トランス✿スキスキ
36増幅治癒IV--160----×トランス✿スキスキ

装備品

主力:両手(武器)LvCP攻撃防御精度
✿トランス・パレンツ✿
トランス:変化 パレンツ:親 トランスパレンツ:透明
2713222048
スロット1攻撃力吸収 Lv6 [+3]
スロット2結界斬 Lv4
スロット3フェイント Lv3 [+1]
補助:補具(防具)LvCP攻撃防御精度
❅妖精伝説❅
だれかがはなしてきかせたよ やしきのなか ねものがたり いきをひそめたようだけど
271327000
スロット1先制 Lv4
スロット2狂戦士 Lv4
スロット3不意打ち Lv3 [+1]
防具:中装(防具)LvCP攻撃防御精度
❆極壷❆
ドウブツノ ウナリゴエ キコエルヨ
27130135135
スロット1火の支配者 Lv6
スロット2火MPアップ Lv1
スロット3自爆 Lv4
攻撃力命中力受け
防御力
受け
成功力
防御力回避力
主力2401685095195195
補助0000

同調Lv一覧

霊玉名(武器)同調Lv
麻痺付加0.2
火炎付加0.2
土重付加0.5
攻撃力吸収2.8
フェイント2
結界斬2
シールドブレイク0.2
霊玉名(防具)同調Lv
治癒力アップ0.5
混乱耐性1
睡眠耐性0.5
先制2
自爆1.9
ブロック0.4
霊玉名(武器・防具)同調Lv
火MPアップ0.5
水MPアップ0.2
火の支配者2.6
狂戦士2
不意打ち2

霊玉名:【青字】同調Lvは上昇可能/【赤字】同調Lvは上限に達している

所持アイテム(11/25)

No種別装備アイテム名価値
1霊玉主1攻撃力吸収 Lv6 [+3] (武器)1,200
2霊玉主2結界斬 Lv4 (武器)400
3霊玉主3フェイント Lv3 [+1] (武器)300
4霊玉補1先制 Lv4 (防具)400
5霊玉補2狂戦士 Lv4400
6霊玉補3不意打ち Lv3 [+1]300
7霊玉防1火の支配者 Lv6600
8霊玉防2火MPアップ Lv1100
9霊玉防3自爆 Lv4 (防具)400
10霊玉シールドブレイク Lv1 (武器) (両手のみ)100
11素材精霊兵の破片75
サブクエストポイント
精霊兵研究所(ヘルミーネ)520
錬金術師(エーレンフリート)105

所属コミュニティ(2)

【コミュニティ一覧】

C-Noコミュニティ名参加
者数
発言
作成
Link
387
懺悔室
43
641
たのしいポーカー
3918
トップページ冒険結果一覧 > E-No.96 (第28回:2013/3/30)