精霊伝説
トップページ冒険結果一覧 > E-No.82 (第28回:2013/3/30)

E-No.82

本名:マリー・バーンシュタイン
通称:マリー

【戦闘結果】【過去の冒険結果】【メッセージ一覧】【Twitter】

一言メッセージ
 



息が上がる。肩を上下させなければ出来ない程に。
肌には浅く、または深く、傷が残る。血は泥と混ざり濁り、肌を汚す。

いくつか詰みあがる中身のない鎧。
ミィのと約束こそあれど、後から後から押し寄せる鉛兵を倒していけば、生きている立場からすれば疲労は蓄積される。
一時的に肉体的能力を劇的に向上させた分のツケが回ってきているのを自覚しながら、けれど剣を振るう手を止めるわけにはいかない。

今逃げたら、この兵は私の背後にある集落へと押し寄せる。
まだ一般の、何の力のない民が遠く逃げ切るには、充分な時間を確保できたとは言えないのだから、私は、…逃げられない。
焦燥と、疲労が、私の動きを鈍らせたか――


「……、……ッ、あ――」

ずるり。
ぬかるんだ土に足が取られた。
視界がブレて、そのまま土の上に身体は叩きつけられ。受身すらまともに取る事が出来ずに、情けなく地べたを這いつくばる。

当然、その機を逃す敵など、いない。
暗雲立ち込める夜の空に向けて掲げられた、兵士の剣は、あと数秒後には私の身体を貫くだろう。

ごめんなさい。

謝罪の言葉は、誰に向けてのものだったかもわからず。
……人にはえらそうな口を叩いておいて、私はこのていたらくなのだと、苦笑いの一つでも浮かべたくはなったが。

都合の悪いときにはいつも、瞳をそらしていた私の悪い癖。
せめて、最期ぐらいは、全てを受け入れる為に振り下ろされる剣を視界にうつし――


「させるかッ……!」

男の声。
剣と私の間に入る人影。

振り下ろされた剣は私に届く事なく、”彼”が持つ盾によって防がれる。
受け止めたその盾を前へと振るい、人型である鉛兵が姿勢を崩したところで、対の手が持つメイスが振り下ろされる。
助けてくれた人物の背中、また、ぐしゃり、と歪んだ兵が地に崩れるのを見ながら。私の口は、目の前の人物の名を。


「ルスキニア様……?」
「マリー……さん? こんなところに、どうして…」

背中越しのままでの会話は、まだ終わってはいない戦いの最中である為。
それは此方の台詞でも、あるのだけど。
オッフェンレンツという地において、出会うとは、助けられるとは思ってもいなかった人物の登場に、ただ、ただ、驚きは隠せない。


「……街を、人を、守りたくて。誰も、死んでほしくなくて、それで。
 助かりました。……肝心の私が死んでしまうところでした」
「全くですよ、無茶をする。俺も貴女のことを言えた身ではないですけどね。
 ……立てますか?」

若干、呆れられてしまっただろうか。こんなみっともない姿を見られれば無理もない話ではあるが。
けれど、そんな苦笑い混じりの相手の言葉は見ないふり。
疲労からくる自身の足の震えには気付かないふりをして立ち上がる。
目の前の相手に、相手の証明しなければならず。
…今から口にする願いは、私が動けなければ話にならないのだから。


「はい。勿論です。もう少し、もう少しだけ、
 せめて私の後ろにある家々の人々の避難が終わるまで」
「ルスキニア様。何故貴方がこのような戦場にいるのかを、私は問いません。
 ただ、……少しだけ、私の我侭を聞いてくださいませんか?」

ガリョからいただいたストールはもう随分と汚してもらったけれど。
それでも彼と、そしてミィからの加護が消えたわけではない。一度は緩んだ手に力を篭める。刃を構え、戦う為
見据えるのは新たに近づく機工兵。


「少しの間だけ、私の背中、預けても、構わないでしょうか」
「ええ。マリーさん。武術会の約束……覚えてますか?
 あの約束を今、果たしましょうか。ちょっと形は違いますけどね。」
「俺の背中を貴女に預けます、マリー・バーンシュタイン!」
「はい、…っ、おまかせください!」

快諾の言葉が、素直に嬉しい。
信頼して背中を預けてもらえるだけの存在として私を扱ってもらえるのも、それ以上に嬉しい。

たった一人での戦闘に比べれば。何と心強い事だろう。
不安も、緊迫し萎縮しようとする心も消えていく。
期待に応えられるだけの、動きを、しなければ。気合を入れなおすように、息を、吸い込んだ。





暫しの時間は過ぎて。より高く積み上げられた、鉛の兵であったもの。
ルスキニアはメイスを地につき、周囲に残党がいないかを確認するよう、辺りを見回しているが、もう立つ事すら私には辛く、
刃を取り落とさぬよう握り締めながらも、既にその手は膝に置かれ。

そんな私の様子は当然向こうも気付いているはずで。
とりあえず、暫しの間の安全を確認すれば、こちらへと近づき。


「俺は今から、……オッフェンレンツの屋敷に向かいます。
 マリーさんも、一緒に行きますか?」

彼もまた、屋敷に――ミィが探していたキワコという人物のように、知人、友人がいて。
その人物を救うべくこの地を訪れたのだろうか。
それとも、この地の領主に力を貸す為に?
何故、こんなところに、貴方が。
彼に救われた際に生まれた疑問が、再度頭の中に生まれるも、――……やはり、深く理由を問うのはやめる。
また、街で出会った際にゆっくりと問えばいいのだ。今はきっと、そんな個人の疑問を満たすよりは彼に一刻も早く、屋敷に向かってもらう方が、大事な事。


「もう、限界で、私が行ってももう足手まといにしかなりません。
 出来るかぎりの事はしました、から。生きて戻らないと、怒られてしまいますから」

もう、私はただの足手まといだ。自分でもわかるし、…傍目からもそれは充分に見てとれるだろう。
人、一人を守って戦うというのがいかに大変かは、一応は知っているつもりだ。

自分が乗ってきて、そしてミィの手によってこの場にとどめられた馬を指差し。
あれに乗って帰れば、何とかならない事もないであろう。
流石に、放置しては今も倒れて意識を失う、といった程にはか弱く見えていない…と良いのだけれど。


「わかりました。どうか、ご無事で。また、ハイデルベルクでお会いしましょう。」
「はい。勿論です。…私、まだ、やりたい事がたくさんありますから」

こちらの意思を尊重し、頷くルスキニアに、此方も一つ、小さく頷いて。
馬の方へと向かいかけた、その足はふと止まる。この地に残るいくつかの心残り。
約束があるから。きっと無事だとは思うけれど。
誓ったのだから、……生きて、帰る為に私はもうこの地に留まるわけにはいかないのだろうけれど。


「もし、緑髪の冒険者の……これと似たストールを巻いた少女を見かけたら。
 ……マリーは、無事ですと。お伝えいただけますか?」

屋敷へと向かったミィと、彼が出会う可能性は高い筈。
ガリョや、サエトラ。……この地に残る多くの人々。無事を確認したい人は、きりがなく多いけれど。
その全てを彼の肩に背負わせる訳にはいかず。

せめて、一人だけ。一人だけ、願いとして託させて欲しい。
我侭を承知で口にするのは、ミィの特徴。示すのはガリョより預かったストール。


「ええ。承りました。」

ほぅ、と安堵の息をはく。
神に、ルスキニアとミィが出会えるのを願うぐらいは許されるだろう。
胸元で十字を切れば、今度こそ馬に近づいて。

一礼を終えれば、馬に、乗る――はずが。
そんな当たり前で当然の事すらもたもたと上手く足や手に力が入らない。
そんな私の惨状を見かねたか、ルスキニアもまた此方に寄り。こちらの身体を持ち上げられてしまい。…馬に乗る、手助けをされてしまった。

ありがとう、御座います。
そんな一言すら、情けなさに僅か眉尻が下がる、が。

ルスキニアは、屋敷を目指し。
私は、この地を無事に脱出する為に。

それぞれが、それぞれの道を歩むべく。二人は別れ。私は、この地を後にする。





帰り道、馬に乗る、というよりは運ばれているという体たらく。
何て情けないんだろう。けれど、これが私の今。私の、現実だ。

出来る事はした。けれど、やはり悔しい。
体力はもう残り少なく、泥が乾き土となり、それを纏った醜い見た目のまま、ゆっくりと時間をかけてハイデルベルグまでの道を戻る。
住まう長屋についた頃には、最早喋る気力もなく。部屋につき、戸を閉めた途端に、倒れこんだ。
寝不足や、緊張や、疲労や、身体の諸々についた傷や。
そういったものを癒す為に、……泥のように、眠りに、ついた。

次の日、起きて、いつもの殺風景な部屋の中。
畳に転がったままに天井を見上げる。まだ、先日までの疲れが消えるはずもなく、戦場でついた傷は消える事はなく――心の中、残った確かな感情もまた、はっきり残っていた。

たった一つの集落も自分ひとりで守れない。
何も、武力で解決しなくても、方法はきっと、いくらでもあるはずで。でも、私にはあんな事しか出来なかった。
明主や、優秀な大臣や、…そんな人たちなら、もっと上手く立ち回れただろうか。怪我人すら、出さずに済んだのではないか。
もしかしたら、紛争すら止めてしまえたのではないか。一度考えてしまえば欲は溢れて止まらない。
そして、――そんな誰かが夢物語であると笑うような理想を、もう、諦めたくは、ない。

目指すべき道は、もう決まった。

けれど力も足りないし、知識も、心の強さも足りない。
幸せを、得るための道のりは、険しく、遠く。けれど、幸いな事に世界は広い。

旅に出れば未知に出くわす。知らぬものを知るものに変えて、次の道を行く。結局のところ、知識と見聞の差は実際に見た者とそうでないのがデカイのさ。

旅人、と表現して良いのだろう。私の知らぬものを知っていた彼の助言は、知識の仕入れ方は、本では決して与えられぬ、この身体で感じる事で得られる方法。
旅の先なら、いくらだってある。
抗争が終わって平和になったならば春になり土と緑の匂いに包まれたオッフェンレンツに行きたい。
いや、オッフェンレンツだけではなくて――

うん、結構平和。町の外も魔物は出るけど、それから守ってくれるギルドの人とか、戦士の人とか一杯で――

故郷では平和そのものだったからな。もしかすると、私の知らない所で未然に防がれてるのかもしれないな。

良かったらうちの国に来ないか?獣人も結構住んでいるし…


各地より人が集まった精霊協会。
ここに私が来れた事は、様々な人に出会えた事、話を聞けた事は、本当に私にとっての糧となった。

意を決したのならば、直ぐにでもはじめよう。
ヘルムフリートとの主従関係は既に彼自身の手で切られ、私はもう誰に従う立場でもない。
時間は有限であり、私は”始める”には出遅れた立場なのだから。





そう。――まずは、人にぐずぐずに甘えてしまっていた、愚かな私の、清算から、はじめよう。




* 本日のここまでの日記は
ルスキニア・リトゥス様(ENo.36)の 協力の元、書かれています。

オッフェンレンツ戦争に参加する日記としては、これにて終了です。
マリー個人の日記としては、個人メッセに続きます。

お知らせ

登録状況
【クエスト】継続登録、メッセージ登録、プロフィール登録、サブクエスト登録
【イベント】ペアマッチ
精霊術の習得
増幅:神速IV を習得!
→ 素質ポイントが上昇! [0→3]
→ 最大HPが上昇! [1560→1610]
→ スタミナが上昇! [255→260]
→ MP増加量が上昇! [17→18]
→ 戦闘設定枠が増加! [17→18]
→ 精製枠が増加! [4→5]
→ 合成枠が増加! [4→5]
強化:攻撃能力強化II を習得!
強化:防御能力強化II を習得!
スキルの鍛練
鍛練によって 増幅 のLvが上昇! [35→36]
装備品の強化
同調によって 主力 のLvが上昇! [26→27]
攻撃 が上昇! [95→100]
精度 が上昇! [165→170]
同調によって 補助 のLvが上昇! [26→27]
攻撃 が上昇! [95→100]
精度 が上昇! [165→170]
同調によって 防具 のLvが上昇! [26→27]
防御 が上昇! [78→81]
精度 が上昇! [182→189]
アイテムの使用
生命の秘薬 を使用!
→ 最大HPが上昇! [1610→1620]
メッセージ送信
イヴァン [7]2件 のメッセージを送信!
サーシャ [11]1件 のメッセージを送信!
フラガラッハ [14]1件 のメッセージを送信!
ルスキニア [36]1件 のメッセージを送信!
ロジェ [48]1件 のメッセージを送信!
マリー [82]8件 のメッセージを送信!
ヘルム [109]2件 のメッセージを送信!
ルーミ [135]1件 のメッセージを送信!
アウラ [205]2件 のメッセージを送信!
リュータロー [216]2件 のメッセージを送信!
アップル [236]1件 のメッセージを送信!
[360]2件 のメッセージを送信!
ニキータ [380]1件 のメッセージを送信!
ジャン [387]1件 のメッセージを送信!
クララ [391]1件 のメッセージを送信!
うさぎ [403]1件 のメッセージを送信!
レンツ [429]1件 のメッセージを送信!
白狼 [752]1件 のメッセージを送信!
ミア [779]1件 のメッセージを送信!
拓斗 [900]3件 のメッセージを送信!
ロイ [927]1件 のメッセージを送信!

メッセージ

フラガラッハ [14]
※ホワイトデー返信
ヘルムフリートの返事を黙って聞いた後に、ふっ、と笑う。

「マリー殿、気持ちは分かりますけれども、あまり難しく考えなくていいと思いますよ。
ヘルムフリートはあなたを幸せにしたいと言っています。
その言葉に嘘偽りが無いのであれば、あなたの都合のいいように利用したらよいではないですか。」

「顔も見たくない、という事であれば、顔を見せるなと言えばいいですし、何か出来そうな事なら、多少の無茶はやってのけるでしょう。
彼は不器用な男です。だから許せとは言いませんが、どうか、そういうものとして上手く利用して頂けたら、と思います」

…けど、ダメでしょうか?と苦笑交じりに。
「はい、ありがとうございます。」

「すみません。無理にやれ、とは言いませんので、楽にして頂けたらと思います。
…そうですね。それでは、私もマリーと呼ばせて頂けますでしょうか。
もちろん、以前のままがよいのでしたらその様に致しますけれども、問題がありませんでしたら、是非。」

マリーも自分と同じように、あまりへりくだった態度を取られる事は好まないだろう、と当たりを付けて言ってみる。
出来る事なら、彼女とも友人になれたらいいのに、そんな事を思いながら。

マリーの言葉に、しばし考え込んだ後に答える。

「私には、本来使える主がいます。
私の一番の目的は、主の生死を確認し、再会する事です。
精霊協会の門を叩いたのは、精霊術という力を手に入れる為でもありましたが、以前主が籍を置いていたので、何か手がかりが無いか、と思った為でした。

…なので、あなたの兄に、あなたの代わりに仕える事も、傍にいる事も約束は出来ません。
ヘルムフリートは友人ではありますが、私の全ては主の為のものです。」

そう答えた後に、ふっ、と軽く笑って。

「でも、ただ彼に付いてやっていてくれ、という話であれば、出来るだけそうしましょう。
恐らくは寂しがっているでしょうしね。
マリーも、出来れば彼と…、いや、これは本人が努力すべき所ですね。口出しするのはやめておきます。」

そう言って、笑う。

「おや、長く引き止めてしまいましたでしょうか。
行ってらっしゃい。マリー」
フォル [26]
フォル
おう、またな!



PL:こちらこそありがとうございました。
また機会があれば!
ルスキニア [36]
人混みに紛れ、遠くなっていくその背中を暫し見送る。
穏やかな眼差し。
(つい、オリオーラとどこか重ねて見てしまっていたけれど
 俺が心配するようなことは、無さそうか。
 兄貴ぶって、つい口出ししすぎてしまったかもしれないな。悪い癖だ。)

「……行こうか、フラガリア。」


肩の辺りを漂っていた相棒に語りかけると歩き出した。
マリーとは、別の道を。半妖精の騎士と精霊は雑踏の中に消えていった。
ロジェ [48]
「あ、じゃあオレ、マリーと打ち解けられたってこと?
 ――嬉しいなぁ」
(彼女の言葉にぱ、と嬉しげ破顔してみせて。
 それからのち、彼女に別れと頭を下げられれば通り過ぐる間の関係、引き留めることもできないのだけれど。)
「……あはは、オレ、そんな大層なひとじゃないよ?
 でも、ありがとな」
「オレもマリーと会えて、話せて、……こういう風に、真摯に接してもらえてさ。
 本当に嬉しかったんだよ。だから」

(またな、って、その言葉が彼女に届いたか否かは。)

(PL:こちらこそ、不躾な凸だったにも関わらずお相手いただきありがとうございました!
 楽しいやり取りでした。また何かありましたらよろしくお願いします!)
マリー [82]
数日後。

一枚の、お茶会への招待状が私の手元に届く。送り主はオズワルド・フォン・エーレンベルグ。招待先は、街からそう離れてはいない位置に立てられた館。エーレンベルグ公爵家。

館の主、より送られた招待状には、当日身につける衣装まで添えられており。
高級品を送られる事に僅かな抵抗はなくもなかったが、この場合の好意は素直に受け取らなければ、きっと、逆に失礼にあたる。
今身につけている藤色の衣装は、まさに彼から贈られたものであり、久しぶりに纏うドレスの独特の布地を指先で撫でる。

既に、時は、その招待状に書かれた日にち。
私は今、迎えにとわざわざ手配してもらった馬車に乗り込み、流れゆく曇り空の下の街並を眺めていた。

オズワルドには伝えねばならない事がある。謝らなければならない事がある。
己の未熟が招いた行為を相手に告げる以上、そこに罪悪感や羞恥心はどうしても残るが、……放置して先に進んでしまうほうが余程愚かな事だ。
胸の中、もう一度言うべき言葉、自分の選択を繰り返す。
共感してもらおうとは思わない。応援される筈もない。理解されるなんて期待はしてはいけない。
――ひどい罵声を受ける事も、それを受けても涙など決して流す資格はない事も、再度、確認すれば、ドレスに皺が寄るというのに、強く、布を握り締めた。





「マリー・バーンシュタイン様ですね?
 本日は我が主の招きに御応諾戴きまして、ありがとうございます。
 エーレンベルグの館へ、ようこそお越し下さいました」

馬車が止まり、扉が開かれれば、そこはもうエーレンベルグ邸の前。
そこに控えていた人物は、碧髪の若い……おそらく、見た目だけで言うならば私よりも若いスーツ姿の人物。
おそらくは執事、なのだろう。初めて出会う人物に、一瞬身構えてしまうのは、他者への警戒が抜け切らぬ所為。


「この度はご招待いただき、誠にありがとう御座います。
 本来ならばこのような場にお呼びいただけるだけでも光栄ですのに、
 迎えの馬車まで……」
「いいえ、とんでもない。
 我が主のお客様とならばこれぐらいは当然のことですよ。
 さあ、こちらになります。どうぞ、足元にお気をつけください」

挨拶と、礼と。お決まりの文句。貴族の屋敷に招かれたのだから当然の礼儀。
執事の道案内に従い、屋敷の中に入る。ふかふかの絨毯や、頭を垂れるハウスメイドたち。こんな風景を見るのが、少し懐かしくもある。
ドレスの裾を踏まぬよう、自然とゆっくりとなる足取り、弾む会話というものが得意でない私にも、道案内役でもある執事は気さくに声をかけさせ、飽きる事もなく。
教育が徹底されているのだろう。改めて、館の主である人物の権力がいかほどのものかを思い知らされる。

案内された先は、何処かの部屋ではなく、ガーデンテラスの方へ。
春の日差しは暖かく、庭に咲く薔薇たちの香りに辺りは包まれ。
色鮮やかに咲き乱れる薔薇が、テラスの中心にある真っ白なテーブルとチェアを際立たせ。


「失礼します。
 オズワルド様、フロイライン・バーンシュタイン嬢をお連れ致しました」

椅子の片方に座るオズワルドの姿に、執事は声をかけ。


「ようこそ、我が館へ」

執事の呼びかけに応じ、目線を向けてオズワルドは椅子から立ち上がる。
微笑みを浮かべながらも此方に歩み寄る姿を眺めながら、薔薇が似合う男性というものもいるものなのだ、とつい眺めてしまう。
なるほど、色鮮やかなドレスを贈られて、それをそのまま身につけて正解だっただろう。

この場では、下手な恰好など掠れて消えてしまいそうに、思える。


「やはり貴女には華やかなドレスが良く似合う。
まるで春の黎明の女神のように美しいですよ、マリー」


ぼんやりと考え事、下手をしれば、オズワルドの姿に見とれている間に私の手は取られ。
手の甲に触れる唇に、驚いたように瞳を丸くしてしまうも、……オズワルドは気にもかけずに席へと戻っていく。
執事に椅子を引いてもらい、こちらもまた腰をおろすものの、やはり、彼と会う度に何処かボタンを一つ掛け違えたような違和感は拭えないのは、…どうしてか。

席につき、いざお茶の時間を、となって。
先ほど出迎えの際に並んでいたメイドたちが菓子の類を運んでくるのかと思いきや、世話まわりを担当するのは先ほどの執事であり。
テーブルの上、あれよあれよという間に沢山の菓子とふわりと漂う紅茶の香に包まれる。
その間、暫く二人の語らいの時間は、本当に些細な、いわば雑談が主であり。

「あれからバーンシュタイン家での貴女の立場はどうなったのだろう。
 ……そういえば先日、偶然にも武術会で貴女の義兄と会って言葉を交わしましたよ。
 以前とは大分様子が変わられたようだが」
「……、…説明は、難しいのですが。
 一言で言えば、従者としての仕事はしなくとも良いそうで。自由の身ではあります。
 様子は、…そうですね、確かに変わりました」

兄と私との関係。
ただの一個人として見るのならば、おそらく、きっと、今の彼は様々な人に受け入れられる筈ではある。
私が嫌っているのも、人によっては理解が出来ぬ、ただ過去を引きずっている我侭にも見て取れるだろう。
明言を避けるのは、話がややこしくなる事を怖れて。――追求はされず、この話題は終わった事に、内心ひっそりと安堵した。

この他にも幾つかは話題をふられては答えを繰り返す。
私の目的。謝罪。それを切り出す切欠を探して、話を上手く膨らます事も出来ず。
それに、彼も気付いたのだろう。


「―――さて、マリー。
 今日は何か私に話したいことがあるのでは?」

自分からではなく。相手に促されなければ話も出来ないもどかしさに眉を寄せるものの。
この機会を逃すわけにもいかず。


「……オズ様。
 貴方は、…私の事を、特別に見てくださって……大事に、扱ってくださって。
 本当に、嬉しく思っています。――こんな風に扱われた事はなかったから」
「女らしくない可愛げのない部分も多々あって、ご迷惑をかけた事も多いでしょうl

オズワルドの方へまっすぐに視線を向け。
罪悪感に、頭を垂れそうになるのを必死に堪えて、指先に力が入る。


「契約の内容、私の口にした言葉、覚えていらっしゃるでしょうか。
 ”もう何処にも逃げ場がなくて、悲しみに、心は包まれて。
  その時には必ず、貴方の名を呼びます。貴方の手をとって、その世界へ参ります”」
「私、……オズ様を逃げ道として、利用しようとしていました。
 何もかもが嫌になっても、貴方がいてくれる、私を受け入れてくれるなんて、
 都合の良い存在として使おうと、していたのです」
「もし、事態が好転し、私の世界が開けたとしても。
 それでも待ち続ける貴方の事を、考えもしなかった。
 約束したのだから、待っていてくれて当然、と…思っていた、のです」

言葉につまる。
あれだけ何度も喋る内容を頭の中で繰り返し、決意をまとめたというのに、人に伝えるという技術面はまるで追いついていない為に生まれる現象が、歯がゆい。もどかしい。


「元よりそのつもりでいたので、貴女が気にする必要はありませんよ。
 私にとって待つことは少しも苦痛ではない
 ……といっても貴女には理解しかねるとは思うが」

余裕のない私を案じてか。それともそれがオズワルドの本心なのか。
私にははかりきれないが、それでもその優しい一言と微笑みに救われるものはある。
彼の優しすぎる手には縋らないと、誓ったばっかりなのに、やはり現実はままならない事ばかり。


「寧ろ現在の生活に絶望し、他に行き場を失くした貴女を
 手に入れようとしていたのだから、
 私の方が貴女の弱みにつけ込んでいたと言えるだろうな」

全く縋らない事は今の私には出来ないのだろうが。
だからこそせめて、このまま言葉を心のうちに押し込めてしまわずに、背をまっすぐに伸ばす。
自分の決意にせめて誇りは持ちたい。そうでなければ、……叶う訳もないのだ。夢物語のような、願いなど。


「オズ様。……私、やりたい事が、出来ました。
 たとえ、傷ついて、もう逃げ道がなくなって、悲しみに涙は止まらなくとも。
 諦めたくないと思える事が、出来たから。だからもう、共には行けません」
「――……オズ様に、あの契約はもう、……破棄、させていただけませんか?」
「都合の良い事を言っている事はわかっています!
 今、ここで罵倒の言葉を受けようとも、
 足蹴にされようとも私は一切何も言えぬ身である事も承知しております」
「けれど、……、……貴方のような優しい方が、
 私を愛してくれたからこそ顔をあげて周りを見る事が、出来たんです。
 下を向いてばかりの人を、1人でも減らせるような、そんな存在になりたいんです」
「どうか、………」

立ち上がる。座ったままで願う事など恐れ多くて、立ち上がった後に頭を垂れる。
優しいオズワルドが、怒鳴り罵倒するという事はもうないだろうが、…それでもやはり罪悪感に胸が痛い。
頭を垂れたまま、沈黙の中、相手の返事を待ち――。


「……せっかくの花の美しい季節だ。
 一緒に散策してみませんか、マリー?
 庭園をご案内しよう」

返事も、話題も、一旦区切るように。唐突な申し出には驚いて顔をあげるが。
会話の続きをと一瞬は焦れるものの、……此方の都合ばかりを押し付ける事への抵抗と、彼の気遣いを考えれば、一つ、静かに頷いた。





執事の案内はもうなく、二人きり、オズワルドのエスコートによって手を取られ、庭園の中を連なって歩く。

テラスからは薔薇のみしか見えなかった庭園は、いざ奥へと進めば、名も知らぬ、おそらくは異国の花が咲き乱れ。はらはらと散る花びらを手に取りながら道を進めば、奥へ、奥へ、まるで迷い込むような錯覚すら感じる。
導かれるままに進み、どれだけ歩いたか、今どの辺りにいるのか、そんな感覚すらさだかではなくなった頃、語らいの場所に設置されたか、それともこの広大すぎる庭園の休憩の場として設けられたか、あずまやが視界に入り。
オズワルドの足が、まっすぐに其方へと向かえばそれに従い私もついていく。

あずまやへとたどり着けば、いつ、一体、誰が。
そんな疑問を持たせるように、よく冷えたレモネードと、それに合う菓子がその場には置かれており。先ほどの執事だろうか、と首を捻るものの、私と、オズワルド以外に何者の姿も見えない。

椅子へ座るよう促されれば腰こそおろすものの。すぐ傍の彼は、此方を見下ろす形で立ったまま。


「差し支えなければ、貴女がやりたいと言っていた事が何なのか
 聞いても構わないだろうか。
 そこまで貴女を決意させたのだから、決して容易いことではないと思うが」

時間も経ったし、私も落ち着いたし。
話の続きはここで、という事だろうか。不意にふられた話題に、少しばかり驚いたものの、彼の今の問いの答えに関しては何一つ迷う事はなく。


「――はい。私、故郷、ダスティーア王国は、獣の血が混ざる者が虐げられる社会。
 差別をなくし、誰も傷つける事なく、
 人と獣人が真の意味で平和に共存できるのが私の望みです」
「私のような身分の者が平和な革命をおこすには、相当の労力が必要となりましょう。
 今の私には、一体何が必要なのか、準備しなければいけないものはどれぐらいあるのか。
 そんな事すらわからない未熟者です」
「ですから、必要なものが何なのか。
 どうすればあの地を生まれ変わらせる事が出来るのか。それを学ぶ為に、
 様々な国を、その風習や政治のあり方を、見てまわる旅に出るつもりです」
「それでは近いうちにハイデルベルグを離れて旅に出られるのですね。
 今まで望みを持たなかった貴女の姿を見てきただけに、
 やるべきことが定まった今の貴女はとても輝いて魅力的に見える」

気付けば目線は手元のレモネードの揺れる水面に。
近いうちに。その言葉には、首を縦に振る。


「契約の破棄が貴女の望みならば、私はそれを受け入れましょう」

良かった、とこぼれる安堵の息。
礼の言葉を紡ぐ為に、再度顔を上げ――……私の、意識は、そこで………不意に、途切れた。





                      赤い双眸

                     耳元での笑い声

                      冷たい目線

                      本当の想い

                      新たな契約

                     贄であるしるし

                      闇の、刻印

            
「吸血を繰り返せば繰り返すほど快楽の中毒度が増し、
            いずれは呼ばれなくとも獲物として自ら私の元へ―――」
 





「――……、っ、ぁ……」
「……良かった。目が覚めたようだね」

瞳を開けば、辺りの景色が先ほどと異なる。
いや、正確にその色が。赤く染まった景色の原因は、もう太陽が傾いている事にあり。空の向こうはもう群青に染まっているのを知れば、随分と長い夢を見ていたようにも思える。
夢の内容は全く思い出せず、ひどくぼんやりとした頭で周囲を見回せば、額から落ちたのであろう濡れたタオルや、身体にしかれたクッションの存在に気付き。
オズワルドに、長い間、看病をさせてしまったのだろうか。


「オズ……様。……私、あの。申し訳御座いませんでした」
「大丈夫ですか。もし歩けないようならば誰かここまで迎えに来させるが」

倒れた理由は思いつかず、まだ意識が完全に覚醒してはいないのか、何処か霞がかかったような意識のまま、それでもこれ以上は迷惑をかけるわけにはいかないと乱れた服を正し起き上がる。
手を貸されれば何とか歩いて帰られる状況である事には、ほっとした。


「ええ、大丈夫です。……――」
「マリー。貴女の目指す理想の国が現実のものとなるよう」

まだ、ぼんやりとした頭のまま。一体私は何を聞こうとしていたのか。
それが何かもわからぬまま、その言葉はオズワルドに遮られる。
首筋に手を添えられ、優しく、其処を、撫でられて。引き寄せられれば、祝福を、と額に口付けが落とされ。
その全てが終われば、差し出される、一輪のマリーゴールド。
別れの悲しみを告げるものなのか、変わらぬ愛情を示すものか、それとも――。
その花を渡す意味には、私にはわからなかったが。


「マリー、またいつか何処かで巡り逢えたのなら、その時は―――」

夕闇の中。途中で止まるオズワルドの言葉。その続きを、何故か促すことは出来ずのまま、ただ相手を見つめていた。
いつもは優しく映る、その微笑みに混ざる違和感。僅かな、ぞくりと背筋を走るもの。その正体は、わからないままに口を閉ざした。
 




その場に残った、千切り捨てられたチョーカーの残骸を。
散った花びらの存在を、……屋敷を去る最後まで気付けぬまま。









* こちらの日記は
オズワルド・フォン・エーレンベルグ様(ENo.344)
ライム・エーレンベルグ様(ENo.345)
の 協力の元、書かれています。
サエトラ [108]
「そう…東洋の。
 君の手に渡るまでにも、長い時間がかかったことだろうね。
 でもそんなに君に大事にされていたんだ、長い旅をした甲斐もあったろうと思うよ。」

ちらりとこちらを伺い見る瞳。一瞬、目が合っただろう。

「何を照れることなんか!そんなこと言われたら、わたしも照れてしまうよ。
 それに…きみの方がずっと美しいよ、マリー。
 わたしはサエトラ、サエトラ・マミテラ。
 …改めて、ありがとう、マリー。わざわざわたしを探してくれて。」

「ねえマリー。わたしはオッフェンレンツという土地に暮らしているんだ。
 もうすぐオッフェンレンツでは、春を祝うミモザのお祭りがあるんだよ。
 きみ、もしよかったらきっとおいでね。
 ハイデルベルクからは少し遠いけど、とってもきれいだからさ…」
ヘルム [109]
そんな言い方はないだろう――

その言葉をヘルムは飲み込んだ。

言葉で語らねば伝わる事は無いだろうから。
黙っていて後悔するのはもう沢山だ。

「1つ誤解があるようだから言っておく。
贈り物で罪を償おうとは思っていない。
ただ、君に喜んで欲しかったんだ」

「俺の罪の償い方。
それは君が辛い思い、嫌な思いををせずに
生きていけるようする」

「故郷で君がどんな風に言われているか、知らないわけじゃない。
一朝一夕で叶う話じゃないが。
バーンシュタインの住人、その意識から変えていく必要がある」

「獣人というだけで差別されない場所。
それを作る事こそが辛い思いをせず、健やかに暮らせる事に繋がるはず」

「甘い考えかもしれないが
でも、俺なりにそう考えた」

自分自身が獣人の血が混じっていると知ってから
ヘルムは色々と考えるようになってきた。

「もちろんすぐには難しいだろう。
それが叶う間。たとえ何を言われようとも。
何をされようとも、俺は君を守る盾となりたい」

「…バーンシュタインから何処かに行くのなら
あまり関係のない話かもしれないが」

最後の言葉は苦笑交じりだった。
熱っぽく語り終えて、一息をついた。

「…すまない。つい熱くなってしまった。
残された時間は少ないけれども。
今は、オッフェンレンツの領主。ペーター様からご教授を頂いている」

「そして、ここでの冒険者生活を終えたら
俺はバーンシュタインに戻って父上の元でお力になろうと思う。
バーンシュタインでの政を学ぶのは、やはり其処が一番だろうから」

軽く首を振ってマリーを見据える。

「君が欲深い人間だとは思うはずがないよ。
そう感じさせたなら、ごめん」

「マリーの望む幸せの形。それは俺にはわからなかったけど。
ただ喜んで欲しかっただけなんだ。それは前から変わっていない」

「ハロウィンの時も、クリスマスの時も。
マフラー、使ってもらえてたらいいんだけど」

そこまで言うと箱を脇に抱えて
無理矢理に笑顔を作った。

「ごめんねマリー。
君を幸せにするのは俺には難しいのかもしれないけど。
それでも俺、頑張るからさ」
最後にフラガの方を見て、一言謝った。

「フラガくんも、ごめんね。
口論みたいになっちゃって。
なかなか、立派にはなれないな」
ミナミ [127]
「い、いえ…、そ、その、いえ、その」
こちらも口元を抑えて恥ずかしいやら申し訳ないやらといった体であった。
久しぶりの、平穏な日だった。
相手とこうして隣り合って座るのは、温かいような、気恥ずかしいような、不思議な気持ちになる。


だがやはり、自分が持ち込んだ話は、彼女の表情を暗くさせてしまった。
予想はしていたこととはいえ、こちらの眉尻も下がり。
プレゼントを相手の手に預けてから、けれどこちらの手はまだ離さずに。はい、と頷く。
少し、間を置いて口を開き。
「フラガラッハさんは、一方通行が、おいやだと…いうようなことを、仰っていました」
「自分の正体を明かさないで、贈るということは、
 贈られた側の気持ちから、逃げる行為だと。
 それを、贈る理由が、悪意であれ、好意であれ、そんな行為は受け取れない、と」

「―――不幸になろうとする人のことを、仰っていました。
 人の幸せばかりを祈って、自身の幸福を蔑ろにしてしまう…、
 誰かからの感謝や好意を、受け止められない人がいるのなら、その人は
 周りの人の気がかりとなり、結果として、周囲に不幸をもたらすのだと」

「あの方は、きっと、その不幸をご存知でいらっしゃるのでしょう、ね。
 もしかしたら身近に、そういう方がいらっしゃるのかもしれません。今も…」


「…マリーさんは…、フラガラッハさんのことが、お好きでしょうか?
 あの方に、幸せであってほしいと、お思いでしょうか…?
 あの方の幸せを祈るなら、多分、マリーさんこそがお幸せでなければ、いけないんです」

「…私のことは、好いてくださって、ますでしょうか。
 私は…貴女のことが、好きです。
 ですから、マリーさんが心配をされないように、悲しいことや嬉しいことは、お話したい。
 共有したい、です」

「フラガラッハさんが、誰かに贈り返したお気持ちと似た物を、私も、持っております。

 少し…二人分では重たいかもしれませんが、受け取って…くださいませんか?」

マリーが、肯定を返すなら、あっさりと贈物は彼女の手に戻るだろう。
曖昧な返事であるなら、道具屋は笑顔のまま、意地でもそれから手を離さない。
ルーミ [135]
「あはは、大丈夫だって!毎日こんなに食べる訳じゃないし!
…うん、大丈夫。」
少し勢いが落ちたような。

「うん、温かい牛乳って凄くホッとするよね。
ミルクティーとか、コーヒー牛乳とか。」

「へぇ…優しい人だね。…ううん、それがお父さんってものなんだろうけど。」
マリーの一言の事は聞かない事にする。…きっと言い難い事だろうから。

「あ、うん、またね!マリーさんお話ありがとう!」
一枚渡したそのお菓子の行方を追う様に、手を振ってマリーを見送る。
少しでも、仲良くなれたならいいのだけど。
ネロ [176]
「……んー、私、マリーさんの事もお友達と思ってるんですけどね。
 やっぱりホラ、お2人がホントの兄妹であるとかそうじゃないとか以前に、
 どちらも私の『お友達』でありますんで、
 出来れば仲良くして欲しいなーって、思ったりとかしたわけなんですが……」
「……えっと、あのですね。
 実を言いますと、母さんが無事に見つかったりしてですね、
 私、しばらくしたらお家に帰ることになっちゃうわけですよ」
「ですので、折角ならちゃんと仲直りして欲しいなーとか、
 まぁスグには無理なのかも知れませんけれど、
 ともかくそんな風に思ったりした感じです」
「……ダメですかね」

「あ、や、それはさて置きまして、
 すっかり言いそびれてしまいましたけれど、
 マリーさんも母さんを探すのについて色々と助言して頂いたりとか、
 手助けして頂いて有難うございました!」

そう言って、女の子はぺこりと頭を下げました。

「特にお礼とか出来そうに無いんですが、
 とりあえずこれ、感謝の気持ちみたいなものです。
 どうぞ受け取ってくださいな!」

手提げ鞄をごそごそやって、中から沢山の飴玉を取り出しました。
アジコ [235]
びくりと震える身体。振り上げられる彼女の手が視界に入るが、せめてもの謝意のつもりで大人しく払い落とされる。笑みを浮かべたまま軽く両手を上げ、恭順の意を示す。

「すまない、どうも俺は手が先に出る性質のようでね・・・失礼した」

特に気にしてはいないようだ。この程度の拒絶なら慣れている、と言えるかもしれない。
男は素直に詫びつつも、彼女の言葉に興味は尽きない。

「へぇ、従者。しかしクビとはまた難儀な話だな。
 だが君のような協会所属の者ならば、仕事には困らないとは思うよ。腕も立つだろうし、世間から見れば信用もある。何より見目麗しいレディーだ」

最後の一言は、じっと眼を覗き込むように投げ込まれる。
っと、こういうノリが苦手なのだろうな・・・とは思いつつもこの娘の反応を見てみたい、というのが本音である。
つまりはこの男、懲りないのだ。

「渡り鳥――いい喩えだ。だがね、鳥さんはちょっと飛べなくなっちまってね。
 ま、言っちまえば傭兵を続けられなくなったのさ。俺もクビみたいなもんかな、はは」
ニキータ [380]
「何事にも夢中になってきたからこそ、あんまりネガティブに考えなかったかもしれないな。諦めないだけの強い心だけは鍛えられた気がするし、これからもそれを忘れないでやっていきたいぜ。ありがとな、少し自身がついたよ」

晴れやかに明快に答える。
返答する声も、笑顔の顔も幾分か自信がみなぎっている。


「昔は塩も簡単に手に入るものじゃなかったから苦労したぜ。味気ない料理も多かったしな。でもこれからはもっと料理についても学んでおくよ。手の込んだものを作るまでには時間がかかりそうだけど、いつかはしっかりとしたものを作ってみたいぜ」
「冒険の疲れを取るのも甘いものがいいみたいだからな。他に人に薦められてるお菓子もあるし冒険のお供にでもしてみるぜ」

粗悪と言ってもいい食生活からの未知なる挑戦は楽しみなことばかりである。
交流していくうちに得た知識を忘れないように必死に心に留めている。


「あはは、こちらこそありがとな。楽しかったぜ。また時間があったら話してくれよな」

一礼して去っていく様子を笑顔で見送っている。
クララ [391]
「……少し待ってくれ。
 ……交渉が下手、と言ったのは改めるべきらしいな」

 立ち去ろうとしたマリーの背中を、呼びとめる。


 嫡男への見解。
 貴族の本懐。
 楽観視せぬ危機感への想定。

「君が交渉に向いてないのは、単に環境の問題のようだ。
 でも環境に呑まれず、畏怖に認識を歪められることなく、過不足なく現状を把握している。
 ……君はあの時自分を獣だと言ったが、今君が言った言葉は貴族の社会を覆す見方。
 高い地位の者から与えられる畏怖に抗い己の意志を保つ、それは知性を持った人間のそれだ。

 いかな大樹と言えど最初は頼りない若木。
 自分の目をこれからも信じて、荒事に慣れてる人に師事を仰いで、
 その人に呑まれないように心がければ、今君が言った守るということはできると思うよ。

 ……ここまでの非礼、どうかお詫びさせていただきたい。バーンシュタインの御息女」

 マリーが見せた高貴なる者の義務感。
 それに敬意を評するように略式ながら首を垂れる。

「貴女が自身のなそうとしたいことを果たせるよう、
 どこかで祈らせてもらうよ。
 ……と、引き留めてすまなかったね。話はそれだけだ。
 縁があれば、また」

 その言葉と共に、気配が遠ざかっていく
ドル [589]
「え、ええと」

男は戸惑っていた。悶えていた、といったほうがいいだろうか。

(破壊力ありすぎでしょマリーさん!)

これがリアルツンデレか。感動にうち震えていたかったが、そうもいかない。
フラグ建築……ならぬ、就職活動のためにも。
残念なことに今回はマリーへ合成できなかったのだ。
それに何だか、今だけは堂々と顔を見れる気がする。

「その、別段からかっているわけではありませんが……」

しかしいざ口にすると恥ずかしい。いつものようにパニックにならずに済むのはいいのだが。

「マリーさんは、普通に可愛い女性だと思います、はい」

思ったより声が小さかったり、噛み噛みだったりするが何とか言い切った。

「あ、その、別にナンパとかそういうわけじゃないんです」

「ただ……そうですね。もっと女性として自信をもたれてもいいと思います」

心の中ではマリーさん可愛い!と大合唱だが流石に口にだせなかった。
とにかく、自信をもってもらえれば。あのギャップも捨てがたいが地球の女性陣がかわいそうになる。

「そうじゃないと、勿体無いというか一般女性の立つ瀬がないというか……」

「あ、その、御気分害されたらすみません」

そう言って頭を下げる男はいつもよりどこか堂々としていたかもしれない。
拓斗 [900]
目の前の女性の口からでた、唯一の反論。
それを聞いた青年は、俯き顔の下半分を押さえ、隠しながら俯いた。
僅かに肩を震わせていることから、笑っていることがわかるかもしれない。

(まったく、時定。昔のお前が聞いたらどう思うだろうな、この言葉)

そのまま、言葉を残して女性が駆け出そうとするならば。
青年はその背に向かい声を投げかける。

「――忘れんよ」

はっきりと、有無を言わせぬように否定する。
だが、それは先の断りよりも、柔らかな印象を与えるかもしれない。

「他の言の葉は忘れようとも、民を捨てぬというその言の葉は、俺は決して忘れはせん。
……五夜が一つ、丙夜の名の元に誓う」

青年は女性の背に向けて付け加えるように。

「それと、勝手な期待だが……。
新たな答え、楽しみにしている」

そうして、女性の背を見送った青年は。

「……さて、食材の買い物に行かないといけやせんなぁ」

そう言って、歩き出した。



PL:こちらこそお相手ありがとうございました!
色々と長かったりして申し訳なく……!
ロイ [927]
唐突に時間が無いと言い切られては仕方ない…。
「ん、そっか、それじゃ…丁度良いからこれやるよ」
と言って、ブローチのような物を軽く放り投げ…
「また会おうって約束みたいなもんだ、またな」
良い笑顔で軽く手を振る

イベント(ペアマッチ)

イベント戦の設定
「イベント登録」で「対戦相手指定設定」「霊玉の装備」などの設定を行えます。
イベント名
パーティ名
メンバーマリー
 [E-No.82]
ふーか
 [E-No.140]

クエスト

クエスト名
パーティ名
メンバーフラガラッハ
 [E-No.14]
メーア
 [E-No.50]
マリー
 [E-No.82]
ヘルム
 [E-No.109]

プロフィール

クラス
種族
性別女性年齢22歳身長163cm体重54kg
今は没落した由緒ある名門、バーンシュタイン公爵家の一人娘。
ただし養子であり本当の血族ではない。
現在は、兄の従者(召使)的な立場をとっている。

化粧ッ気は薄く、公爵家の淑女としての煌びやかさは欠片も見受けられない。

従者としての動きはほぼ完璧であるものの、それ以外の事となるとまるでやる気はない。
事なかれ主義で、荒波を起こさない為なら嘘も平然とつく。秘密主義。基本、笑わず、叫ばず、泣かず、怒らない。
礼儀はわきまえてはいるが、愛想がいいわけではなく、口数も少ない為に雑談には適さない。

領地は遠い昔、獣人の国。
後に人間の支配化に置かれ、今に至るものの、領地に住まう人々は獣の血が混ざっている事が多い。
マリーもまた純粋な人間ではなく、獣(マリーの場合は猫科の何か)が混ざっている。
人よりほんのすこし瞬発力が高く敏捷。また怪我の治りも微々たるものではあるが早い。が、その反面、人がかかる病気には余り強くないらしい。

腰につけた鞄の中に、多量の種類の解熱鎮痛剤、軟膏、傷薬、治療道具の類が入っている。



*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*

当方のキャラは無愛想の気があり誰とでも仲良くというロールは出来ないです。
平気で人を嫌ったり怒ったりします。険悪になります。注意。

また、基本は兄(Eno.109)と行動を共にする事が多いです。
個人メッセ(会話)に混ざってくる事は基本ありませんが、メッセの内容が兄に聞えている可能性が多々あります。
お嫌な場合は一人の際にと一言付け加えてください。

戦闘演出絵(限定解除)は、Eno.96 キワコ様 に書いていただきました。
本当にありがとうございます。

アイコン20は、Eno.No.36 ルスキニア・リトゥス様 作のオッフェンレンツ戦争一言メッセ用のアイコンです。

アイコン一覧

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サブプロフィール

ラウル。

ダスティーア王国の中、特にバーンシュタイン領を利用し、獣人の国の再建を目論む人物。

獣人の血が薄れたダスティーア王国内で、このように獣を色濃く残す人物は本当に稀である。
マリーと面識があり、少なくともマリーにとって一定以上の信頼を置ける人物。この街についてからも何度か手紙にて連絡を取り合っていたものの、とうとうマリー本人の前に姿を現した。

基本、何処に住んでいるのかは公開されていない。
マリー自身もまた連絡先が何処なのかは知らない。


※こちらの人物はマリーのメッセでは基本登場しません。
 街で見かけた、等の理由でラウルと指定して話しかけてくだされば対応いたしますが、
 マリーと同じく、一癖、二癖もありますので、皆と仲良くというわけにはいかないかと。

 あと、セクハラ、します。(…)

ステータス

HP火MP水MP風MP土MPMP増加量スタミナ素質PGP
1620002001826031,383
増幅放出治癒結界強化操作具現中和精製
36.8200011.460000

素質

HPアップ Lv4スタミナアップ Lv4風MPアップ Lv1

精霊術

術No系統種別MPコスト対象
拡大
対抗
発動
術名
1増幅強打40------××
1増幅強打II80------××
1増幅強打III120------××
1増幅強打IV160------××
122増幅突撃40------××
250増幅憤怒40------××
250増幅憤怒II80------××
250増幅憤怒III120------××
2増幅連撃----40--××
2増幅連撃II----80--××
2増幅連撃III----120--××
2増幅連撃IV----160--××
212増幅乱撃----40--××
212増幅乱撃II----80--××
212増幅乱撃III----120--××
210増幅瞬斬----40--××
210増幅瞬斬II----80--××
210増幅瞬斬III----120--××
128増幅神速----40--×
128増幅神速II----80--×
128増幅神速III----120--×
128増幅神速IV----160--×
129増幅超神速----60--×
129増幅超神速II----120--×
129増幅超神速III----180--×
131増幅回避--40----×
131増幅回避II--80----×
3増幅防御------40×
3増幅防御II------80×
3増幅防御III------120×
3増幅防御IV------160×
278増幅限定解除10101010×
278増幅限定解除II20202020×
278増幅限定解除III30303030×
15強化攻撃能力強化20--20--
15強化攻撃能力強化II40--40--
16強化防御能力強化--20--20
16強化防御能力強化II--40--40
40強化縮地----40--
41強化流水--40----
213強化二天一流10101010
231強化流水の衣--40----

装備品

主力:二刀流(武器)LvCP攻撃防御精度
シュヴァルツリーリエ
義理の父よりの贈り物。片刃の短剣で、盾、剣、百合が入った紋章が刻印されている。
27131000170
スロット1連撃 Lv2 [+2]
スロット2聖光付加 Lv4 [+5]
スロット3魔闇付加 Lv5 [+4]
補助:二刀流(武器)LvCP攻撃防御精度
ミセリコルデ
刃は細く棒状。見た目は十字架に似ている。何処にでも売られている一品。
27131000170
スロット1剣舞 Lv4 [+3]
スロット2火炎付加 Lv2
スロット3必中 Lv1
防具:軽装(防具)LvCP攻撃防御精度
ボロマント
細く伸ばした鋼線で輪を作り、それらを互いに連結して布にしたもの。
2713081189
スロット1風の支配者 Lv2
スロット2猛風MPアップ Lv2 [+2]
スロット3風の加護 Lv2 [+3]
攻撃力命中力受け
防御力
受け
成功力
防御力回避力
主力15817340100166208
補助15817340100

同調Lv一覧

霊玉名(武器)同調Lv
火炎付加1
水冷付加0.4
風雷付加0.9
土重付加0.5
聖光付加2.8
魔闇付加2.8
必中0.5
ダメージスロット1
連撃2
剣舞2.4
霊玉名(防具)同調Lv
風雷耐性0.5
かばう0.5
霊玉名(武器・防具)同調Lv
精度アップ1.1
猛風MPアップ1.6
風の加護2.5
風の支配者1

霊玉名:【青字】同調Lvは上昇可能/【赤字】同調Lvは上限に達している

所持アイテム(21/25)

No種別装備アイテム名価値
1霊玉主1連撃 Lv2 [+2] (武器) (二刀流のみ)200
2霊玉主2聖光付加 Lv4 [+5] (武器)800
3霊玉主3魔闇付加 Lv5 [+4] (武器)1,000
4霊玉補1剣舞 Lv4 [+3] (武器) (二刀流のみ)800
5霊玉補2火炎付加 Lv2 (武器)200
6霊玉補3必中 Lv1 (武器)100
7霊玉防1風の支配者 Lv2200
8霊玉防2猛風MPアップ Lv2 [+2]400
9霊玉防3風の加護 Lv2 [+3]200
10霊玉風雷付加 Lv1 [+4] (武器)100
11霊玉腐食 Lv1 (武器)100
12霊玉連撃 Lv1 [+2] (武器) (二刀流のみ)100
13霊玉睡眠耐性 Lv1 (防具)100
14霊玉風雷耐性 Lv1 (防具)100
15霊玉ブロック Lv1 (防具) (盾のみ)100
16霊玉猛風MPアップ Lv1 [+1]200
17霊玉ワクチン生成 Lv1100
18素材精霊兵の破片75
19素材精霊兵の破片75
20素材精霊兵の破片75
21素材精霊兵の破片75

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